第57話 救われなかった理由
翌朝。
ユリウスは、
いつもより
少しだけ
早く目を覚ました。
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「……よく、
眠れたな」
それが、
一番の違和感だった。
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体が軽い。
だが、
問題が
消えたわけでは
ない。
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職場。
机の上には、
変わらない量の
書類。
評価表も、
昨日のまま。
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「……何も、
変わってない」
当然だ。
あの旅人は、
何も
解決していない。
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「……期待したのか」
自分に問いかける。
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答えは、
苦い。
期待していた。
救われることを。
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「……答えを、
もらえると
思っていた」
それは、
自分でも
情けなかった。
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会議。
いつも通りの
進行。
いつも通りの
判断。
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「……この件、
どう思いますか」
部下が、
尋ねる。
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「……問題ない」
即答。
だが、
一瞬
言葉が
遅れた。
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「……?」
部下は、
気づかなかった。
それでいい。
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昼。
同僚が、
声をかけてくる。
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「……昨日、
早かったな」
「ああ」
「珍しい」
「……たまには」
それ以上、
話は
続かない。
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評価は、
依然として
ユリウスを
守っている。
そして――
縛っている。
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「……降りなくても
いい、か」
あの言葉が、
頭をよぎる。
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「……無責任だ」
そう
切り捨てようとする。
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だが。
完全には
否定できない。
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なぜなら。
あの旅人は、
ユリウスを
肯定もしなかった。
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「……どちらでも
ない」
それが、
一番
厄介だった。
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夜。
自室。
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「……救われなかった」
声に出して
確認する。
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助言も、
導きも、
なかった。
正解も、
提示されなかった。
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「……なのに」
胸の奥が、
少しだけ
静かだ。
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理由を
考える。
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「……否定されなかった
から、か」
降りない自分を。
評価に
縋る自分を。
逃げているかもしれない
自分を。
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誰も、
裁かなかった。
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「……それだけで、
こんなに
違うのか」
ユリウスは、
椅子にもたれる。
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世界は、
相変わらず
評価で回っている。
自分も、
その中にいる。
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だが。
「降りなければならない」
という
強迫観念だけが、
少し
薄れていた。
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救われなかった理由。
それは、
答えを
与えられなかった
からだ。
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だが――
答えを
奪われなかった
ということでもある。
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ユリウス・フェルナーは、
その夜、
もう一度
考え始めた。
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降りるか、
降りないか。
ではなく。
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**どうすれば、
壊れずに
選び続けられるか。**
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その問いだけが、
静かに
残っていた。
答えは、
まだ
出ていない。
だが――
問いを
持ち続けられるだけの
余裕が、
少しだけ
戻っていた。
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