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無能扱いで追放された俺、実はパーティが崩壊しないよう全部やってただけでした 〜戻ってこいと言われても、もう遅い〜  作者: 芋平


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54/55

第54話 降りるという噂

 それは、

 正式な報告ではなかった。


 会議資料にも、

 評価表にも

 載らない。


---


「……最近、

 妙に静かだと思わないか」


 昼休み。


 同僚が、

 何気なく言った。


---


「何が?」


「現場だよ」


「事故も、

 クレームも、

 数字上は減ってる」


 ユリウスは、

 箸を止める。


---


「……対策が

 効いているんだろう」


「そうか?」


 同僚は、

 首をかしげる。


---


「対策に

 しては、

 記録が薄い」


「功績者も、

 いない」


 ユリウスは、

 黙る。


---


「……噂だがな」


 同僚は、

 声を落とす。


---


「評価から

 降りた連中が

 いるらしい」


 その言葉は、

 妙に軽かった。


 だが――

 耳に残った。


---


「降りた?」


「正式には、

 そうは呼ばれてない」


「評価を

 拒否したとか」


「制度の外で

 動いてるとか」


 ユリウスは、

 眉をひそめる。


---


「……無責任だな」


 思わず、

 口に出た。


---


「そうか?」


 同僚は、

 即座には

 うなずかなかった。


---


「壊れてないらしい」


 その一言が、

 刺さる。


---


「評価も、

 昇進も、

 捨てて」


「でも、

 倒れてもいない」


「……妙だろ」


 ユリウスは、

 視線を落とす。


---


 午後。


 資料を

 確認していても、

 集中できない。


---


「……評価から

 降りる」


 頭の中で、

 言葉を

 反芻する。


---


 不可能だ。


 少なくとも、

 自分には。


---


 家族の顔が

 浮かぶ。


 部下の顔が

 浮かぶ。


 今、自分が

 抜けたら

 誰が

 その責任を

 負うのか。


---


「……無理だ」


 小さく、

 呟いた。


---


 だが。


 無理だと

 思った瞬間。


 胸の奥に、

 わずかな

 安堵が

 生まれた。


---


 ――選ばなくて

 いい。


 そう

 思えたからだ。


---


 帰路。


 街道沿いの

 小さな茶屋。


 いつもは

 素通りする場所。


---


「……少し、

 休むか」


 自分でも

 意外だった。


---


 茶屋の中は、

 静かだった。


 客は、

 二人だけ。


---


「……あの人、

 名前も

 名乗らなかったな」


「でも、

 助かったよ」


 小声の会話。


---


 ユリウスは、

 耳を澄ます。


---


「夜、

 何も

 起きなかった」


「見回りは、

 確かに

 あった」


「でも、

 誰だか

 分からない」


---


 評価も、

 称賛も、

 ない話。


 だが――

 確かな

 結果だけが

 ある。


---


「……降りた人、

 か」


 ユリウスは、

 茶を飲む。


---


 不思議と、

 胸が

 少しだけ

 軽くなった。


---


 その理由を、

 彼は

 まだ

 言語化できない。


---


 評価から

 降りるという噂。


 それは、

 憧れでも、

 希望でもない。


 ただ――

 「別の生き方が

 存在する」という

 事実だった。


---


 そして事実は、

 否定よりも

 強い。


---


 ユリウス・フェルナーは、

 その日、

 初めて

 考えてしまった。


 **もしも。**


 もしも、

 評価が

 すべてでは

 なかったら。


---


 その問いは、

 まだ

 答えを

 求めていない。


 だが――

 確実に、

 心に

 根を下ろし始めていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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これからもどうぞよろしくお願いします!

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