表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能扱いで追放された俺、実はパーティが崩壊しないよう全部やってただけでした 〜戻ってこいと言われても、もう遅い〜  作者: 芋平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/56

第52話 一つの失点

 それは、

 誰の目にも

 「事故」に近い出来事だった。


---


「……数値が、

 合いません」


 部下の声は、

 慎重だった。


 慎重すぎるほどに。


---


「どこが?」


 ユリウスは、

 すぐに椅子を引いた。


 覗き込む。


 書類。

 報告。

 計算式。


---


「……ここだな」


「はい」


「入力は?」


「確認しました。

 合っています」


 沈黙。


---


「……先方の提出が、

 一日遅れています」


「向こうの

 都合か」


「はい」


 ユリウスは、

 小さく息を吐いた。


---


「修正案は?」


「二通りです」


「早い方で」


「ですが、

 責任の所在が……」


「私が持つ」


 即答だった。


---


 会議は、

 滞りなく終わった。


 誰も、

 責められなかった。


 誰も、

 声を荒げなかった。


---


 それでも。


 空気は、

 少しだけ

 変わっていた。


---


「……上から、

 連絡が来ています」


 別の部下が、

 言いづらそうに

 告げる。


---


「確認が

 入りました」


「内容は?」


「“なぜ事前に

 察知できなかったか”と」


 ユリウスは、

 瞬きする。


---


「……察知?」


 不可能だ。


 だが、

 それは

 口にしない。


---


「分かった。

 私が説明する」


 部下は、

 ほっとした顔をする。


---


 その表情を見て、

 ユリウスは

 胸の奥が

 少しだけ

 痛んだ。


---


 ――当然だ。


 自分が

 やるべきことだ。


---


 説明は、

 論理的だった。


 責任の所在も、

 明確だった。


 誰も、

 無能ではない。


---


「……理解は

 しました」


 上官は、

 そう言った。


 だが――

 声は、

 以前より

 冷たかった。


---


「今後は、

 より慎重に」


「……承知しました」


 それだけ。


---


 評価は、

 下がらなかった。


 減点も、

 なかった。


---


 だが。


 加点も、

 なかった。


---


 戻る途中、

 廊下で

 同僚とすれ違う。


---


「……大変だったな」


「まあな」


「でも、

 ああいうの、

 最近多いな」


「……そうか?」


 ユリウスは、

 笑った。


---


 その夜。


 自室で、

 一人になる。


---


「……失点、

 か」


 声に出して

 確かめる。


---


 評価表を、

 開く。


 数字は、

 まだ

 自分の味方だ。


---


「……まだ、

 大丈夫だ」


 昨日と

 同じ言葉。


 だが――

 重さが違った。


---


 壊れてはいない。


 だが、

 少しだけ

 削れた。


---


 その削れは、

 誰にも

 見えない。


 記録にも

 残らない。


---


 だからこそ。


 誰も、

 止めない。


---


 ユリウス・フェルナーは、

 今日も

 壊れていなかった。


 だが――

 「完璧」では、

 なくなった。


---


 その違いを、

 世界は

 まだ

 評価しない。


 だが、

 確実に

 覚え始めていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ