第49話 それでも世界は回る
世界は、
完璧を求める。
だが――
完璧が無理だと分かったとき、
次に選ぶのは
「諦め」だ。
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冒険者ギルド本部。
以前ほど
声の張り合いはなかった。
机に並ぶ資料も、
どこか投げやりだ。
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「……結論が出ません」
官僚の一人が言う。
「評価できない」
「管理できない」
「だが、
被害は減っている」
全員が、
うなずいた。
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「排除は?」
「理由がない」
「同化は?」
「効果が薄い」
「規則改定は?」
「現場が疲弊する」
選択肢が、
一つずつ
消えていく。
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「……なら」
上官が、
静かに言った。
「“存在しないもの”として
扱う」
誰も、
すぐには
反論しなかった。
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「記録しない」
「評価しない」
「注視もしない」
「問題が
起きたときだけ
対処する」
それは、
制度にとって
敗北に近い判断だった。
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「責任は?」
「取らない」
「……それで?」
「世界は、
回っている」
それが、
最終的な理由だった。
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一方。
港町では、
特別な変化はなかった。
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「最近、
静かだな」
「そうだな」
「まあ、
いいことだ」
それだけ。
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ロイは、
相変わらず
名を名乗らずに
歩いていた。
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「……助かりました」
村人が言う。
「はい」
それ以上は、
続かない。
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次の村へ。
また、
同じことをする。
記録は、
残らない。
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一方。
エナは、
ギルド内の
非評価区分で
働いていた。
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「……安全ですね」
受付が言う。
「はい」
「事故も、
ほとんどありません」
エナは、
小さくうなずく。
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「……息は、
できてる?」
同僚が聞く。
「はい」
「それなら、
いい」
それ以上、
踏み込まれない。
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一方。
俺とミレイアは、
丘の上にいた。
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「……終わった感じ?」
ミレイアが聞く。
「いいえ」
「え?」
「片付いただけです」
彼女は、
苦笑した。
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「世界、
諦めたのね」
「はい」
「負けた?」
「いいえ」
俺は、
静かに言う。
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「勝ち負けの
土俵から
降りました」
ミレイアは、
少し考え――
うなずいた。
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視界の端に、
文字が浮かぶ。
《対応方針:黙認》
《記録:停止》
《介入条件:問題発生時のみ》
(……十分だ)
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それでも世界は回る。
英雄がいなくても。
革命がなくても。
評価できない成果が
混ざっていても。
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ロイは歩く。
エナは留まる。
名もなき人々が、
それぞれの場所で
選び続ける。
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世界は、
すべてを
理解できなくても、
止まらない。
それでいい。
完璧ではないからこそ、
壊れずに
回り続けるのだから。
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