第48話 評価できない成果
制度は、
理解できないものを
放置できない。
だからまず、
測ろうとする。
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冒険者ギルド本部。
臨時の分析会議が
開かれていた。
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《未登録功績事案の
可視化について》
資料の表紙は、
真面目だった。
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「……成果は
出ています」
若い官僚が言う。
「盗賊被害、
局地的に減少」
「畑荒らし、
報告数低下」
「夜間トラブル、
減っています」
数字だけ見れば、
優秀だ。
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「原因は?」
上官が問う。
「……不明です」
空気が、
一瞬止まる。
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「冒険者の
活動履歴に
一致しない」
「ギルド外傭兵の
記録もない」
「住民の
自助努力?」
「……一部は、
そうでしょう」
だが、
説明しきれない。
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「では」
上官が言う。
「“不明因子”として
分類する」
官僚たちが、
資料をめくる。
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《仮称:
非評価型介入者》
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「……名前、
付けましたね」
誰かが
小さく呟く。
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「名前がなければ、
管理できない」
「管理できなければ、
責任が取れない」
論理は、
一貫している。
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「指標を
作れ」
「成果の
測定方法を」
官僚たちが、
頭を抱える。
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「討伐数?」
「戦闘が
発生していない」
「被害軽減率?」
「介入前後の
比較ができない」
「住民満足度?」
「主観的すぎます」
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「……つまり」
上官が言う。
「成果はあるが、
評価できない」
沈黙。
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「それは」
別の官僚が言う。
「成果とは
呼べないのでは?」
「違う」
上官は、
首を振る。
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「呼べないのは、
我々の側だ」
その言葉は、
珍しく
弱音だった。
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一方。
ロイは、
小さな町で
井戸の修理を
手伝っていた。
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「……冒険者さん?」
「違います」
「じゃあ、
何者?」
「通りすがりです」
それで、
会話は終わる。
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井戸は、
直った。
水は、
出た。
誰も、
記録しない。
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「助かったよ」
老人が言う。
「はい」
それだけ。
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翌日。
別の町で、
同じようなことが
起きていた。
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「夜が、
静かだな」
「最近、
誰かが
見回ってる?」
「……分からん」
成果は、
確かにある。
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一方。
俺とミレイアは、
街道沿いの
茶屋にいた。
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「……評価、
無理そうね」
ミレイアが言う。
「はい」
「数値化できない」
「はい」
「英雄も、
いない」
「はい」
彼女は、
少し笑った。
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「制度、
嫌がるわね」
「はい」
「一番」
「はい」
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視界の端に、
文字が浮かぶ。
《数値化試行:失敗》
《分類:暫定》
《対応方針:未定》
(……詰んできたな)
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評価できない成果。
それは、
制度にとって
最も不安な存在だ。
失敗なら、
修正できる。
成功なら、
再現できる。
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だが――
評価できない成功は、
どちらでもない。
褒められず、
責められず、
消せない。
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ロイは、
今日も
名を残さない。
だが、
水は出る。
夜は静かだ。
畑は荒れない。
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世界は、
それを
「成果」と
呼べないまま、
ただ
恩恵だけを
受け取っていた。
そして――
それが、
一番
扱いづらかった。
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