第46話 誰も褒めない成功
成功には、
二種類ある。
褒められる成功と、
誰にも気づかれない成功だ。
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ロイが次に辿り着いたのは、
街道沿いの小さな集落だった。
宿も、
ギルドも、
常駐の冒険者もいない。
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「……泊めてもらえますか」
村長代わりの老人が、
首をかしげる。
「泊まるのは構わんが」
「仕事は?」
「選べますか」
老人は、
一瞬考え――
うなずいた。
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「畑荒らしが出る」
「魔物かは分からん」
「夜に音がする」
危険度は、
不明。
だが、
切迫してはいない。
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「見回るだけでいい」
「それで、
報酬は?」
「銀貨一枚」
安い。
だが――
割に合う。
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「受けます」
ロイは、
即答した。
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夜。
ロイは、
畑の端に立つ。
月明かり。
風。
虫の音。
評価は、
どこにもない。
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音は、
本当に小さかった。
人ではない。
魔物でもない。
ただ――
飢えた獣。
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「……帰れ」
ロイは、
低く言う。
石を投げ、
距離を取る。
獣は、
一瞬迷い――
森へ戻った。
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戦闘は、
なかった。
畑は、
荒れなかった。
村は、
静かなままだ。
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翌朝。
「……何も、
なかったな」
老人が言う。
「はい」
「助かった、
……のか?」
「結果として」
ロイは、
そう答えた。
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老人は、
銀貨を渡す。
「すまんな、
安くて」
「十分です」
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その日。
別の村人が、
声をかけてきた。
「倉の屋根、
見てくれないか」
「崩れそうで」
それも、
戦いではない。
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「危険は?」
「落ちると
痛いくらいだ」
「なら、
大丈夫です」
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半日後。
屋根は、
補強された。
誰も、
見ていなかった。
拍手も、
歓声も、
ない。
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「……助かった」
それだけ。
それで、
終わりだ。
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夜。
ロイは、
焚き火の前で
パンをかじる。
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「……褒められないな」
独り言。
だが、
不満はなかった。
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一方。
数日後。
街道を通った商人が、
別の村で話す。
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「この先、
夜も静かだった」
「畑も荒れてない」
「最近、
変なことが
減ったな」
だが、
誰がやったかは
知らない。
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噂は、
名前を持たない。
功績も、
記録されない。
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俺は、
少し離れた宿で
その話を聞いていた。
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「……誰の手柄か
分からないのね」
ミレイアが言う。
「はい」
「でも、
確実に
役に立ってる」
「はい」
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視界の端に、
文字が浮かぶ。
《非評価成果:拡散》
《功績帰属:不明》
《世界影響度:微》
(……理想的だ)
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誰も褒めない成功。
それは、
誰にも奪われない。
評価されない成果は、
競争を生まない。
競争がなければ、
無理も、
焦りも、
起きない。
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ロイは、
今日も歩く。
名も、
肩書も、
物語もない。
だが――
壊れない成果だけが、
静かに
積み上がっていった。
世界は、
それを
まだ
成功と呼ばない。
だが、
失敗とも
呼べなかった。
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