第41話 折れた人、残った人
圧力は、
必ず結果を生む。
それは正しさでも、
間違いでもない。
ただの、
選別だ。
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港町の冒険者ギルド。
掲示板の前で、
一人の冒険者が立ち尽くしていた。
ロイの、
元仲間だった。
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「……戻るよ」
彼は、
誰にともなく言った。
「評価、
受けることにした」
周囲が、
一瞬静まる。
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「悪い選択じゃない」
誰かが言う。
「仕方ない」
「生活がある」
理解の言葉が、
飛ぶ。
それでも――
彼は、
目を合わせなかった。
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「……楽に、
なりたかった」
それが、
本音だった。
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評価面談室。
元仲間は、
頭を下げる。
「戻ります」
受付は、
淡々と書類を差し出した。
「規定通りです」
「今後は、
指示に従ってください」
彼は、
うなずいた。
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その日。
危険度の高い依頼に、
彼の名前が
追加された。
評価を
取り戻すためだ。
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一方。
ロイの班は、
二人のままだった。
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「……一人、
減りましたね」
エナが言う。
「はい」
「寂しいです」
「はい」
それでも、
ロイは
引き止めなかった。
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「正しい選択
だったと思いますか」
エナが聞く。
「彼にとっては、
そうでしょう」
「私たちは?」
「……分かりません」
正直な答えだった。
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数日後。
事故が起きた。
評価を
取り戻そうとした班が、
深手を負った。
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「……」
ロイは、
報告を聞いて
黙り込む。
エナも、
何も言えない。
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「あなたのせいだ」
誰かが、
ロイに言った。
「断らなければ、
彼は
行かなかった」
ロイは、
静かに首を振る。
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「それは、
彼の選択だ」
「……冷たい」
「はい」
「でも」
ロイは、
はっきり言う。
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「選択を
奪う方が、
もっと残酷だ」
その言葉に、
反論はなかった。
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一方。
評価拒否者の中にも、
戻る者が
増えていた。
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「……やっぱり、
無理だった」
「家族がいる」
「嫌われるのは、
きつい」
それぞれの理由。
どれも、
否定できない。
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だが――
残る者も、
確かにいた。
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「……私は、
残ります」
エナは、
静かに言った。
「怖いけど」
「嫌われるけど」
「それでも、
前より
息ができる」
ロイは、
小さくうなずいた。
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その夜。
俺とミレイアは、
港町を離れる
最後の夜を迎えていた。
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「……結構、
脱落したわね」
「はい」
「それで、
いいの?」
「いいえ」
「え?」
「良くはありません」
俺は、
静かに言う。
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「ですが、
現実です」
「全員が
降りられる
わけではない」
「降りられないことが
悪でもありません」
ミレイアは、
考え込む。
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「……じゃあ」
「残った人は?」
「選んだ人です」
それだけだった。
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視界の端に、
文字が浮かぶ。
《同調残存率:低下》
《定着個体:少数》
《質:高》
(……十分だ)
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評価から降りる。
それは、
誰でもできる
選択ではない。
だが――
できた者は、
簡単には折れない。
世界は、
数を欲しがる。
だが、
壊れないのは
いつも
少数だった。
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