第34話 評価されなかった世界
世界は、
結論を出さなかった。
それが、
結論だった。
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王都では、
辺境に関する議題が
正式な議会に上がることはなかった。
商会も、
宗教も、
国も。
どこも同じ判断をした。
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「……触れない方がいい」
それ以上でも、
それ以下でもない。
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評価できない。
管理できない。
だが、
被害もない。
なら――
見なかったことにする。
それが、
世界の選んだ
最も楽な道だった。
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一方。
俺は、
海の見える丘に立っていた。
港町から
少し離れた場所。
風が強く、
人も少ない。
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「……結局、
何も起きなかったわね」
ミレイアが言う。
「はい」
「世界が
変わるかと思った」
「変わっています」
「え?」
「気づかれない形で」
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彼女は、
少し考える。
「それ、
一番ずるいやつじゃない?」
「一番、
壊れないやつです」
彼女は、
苦笑した。
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港では、
船が出入りしている。
英雄も、
革命家も、
乗っていない。
ただ、
働く人と、
生きる人がいる。
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「ねえ、レオン」
「はい」
「この先、
どうするの?」
「分かりません」
「また、
どこか行く?」
「はい」
「……止まらないのね」
「止まる理由が
ありません」
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視界の端に、
最後の表示が浮かぶ。
《記録》
《評価対象:なし》
《観測終了》
(……これでいい)
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世界は、
英雄を欲しがる。
分かりやすい敵も、
劇的な勝利も、
好む。
だが――
それがなくても、
生きていける場所がある。
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評価されなかった世界。
それは、
何も変わらなかった
世界ではない。
ただ、
変わったことを
誰も
記録しなかっただけだ。
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「ねえ」
ミレイアが、
海を見ながら言う。
「もし、
誰かが
あんたのことを
探しに来たら?」
「その時は」
俺は、
静かに答える。
「また、
通り過ぎます」
「……ほんとに」
「はい」
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俺たちは、
丘を下りる。
名前も、
役割も、
目的もない。
ただ――
壊れない選択だけを
手放さずに。
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世界は今日も、
誰かを評価し、
誰かを切り捨てている。
それでも。
評価されない場所は、
静かに生き残った。
誰にも知られず、
誰のものにもならないまま。
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