表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能扱いで追放された俺、実はパーティが崩壊しないよう全部やってただけでした 〜戻ってこいと言われても、もう遅い〜  作者: 芋平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/35

第29話 追う者と、逃げる者

 追跡は、静かに始まった。


 号令もなく、

 宣戦布告もない。


 ただ、

 人が配置され、

 道が塞がれ、

 選択肢が減っていく。


---


「……来てるわね」


 ミレイアが、

 丘の上で小さく言った。


「はい」


 俺も、

 同じ気配を感じていた。


 辺境の空気が、

 わずかに“整えられて”いる。


 人為的だ。


---


 追っているのは、

 軍ではない。


 だが、

 素人でもない。


 王国と連邦が共同で組織した、

 小規模の実働部隊。


 目的は一つ。


 捕まえないこと。

 だが、逃がさないこと。


---


「露骨じゃないわね」


「はい」


「でも、

 完全に包囲してる」


 街道の先。

 森の入り口。

 川沿いの渡し。


 全てに、

 “偶然を装った人間”がいる。


---


「戦う?」


 ミレイアが聞く。


「しません」


 即答だった。


「勝てるでしょ」


「勝ってはいけません」


「……なるほど」


 彼女は、

 すぐ理解した。


 勝てば、

 理由が生まれる。


 理由は、

 正当化に使われる。


---


「じゃあ、

 どうするの?」


「すり抜けます」


 俺は、

 来た道を振り返る。


「人の目が、

 一番薄いところから」


---


 追う側も、

 迷っていた。


「……本当に、

 彼一人なのか?」


「護衛はいない」


「武装も、

 最低限だ」


 報告が、

 錯綜する。


---


「なのに、

 捕まえられない」


 部隊長が、

 低く呟いた。


「なぜだ?」


 部下は、

 答えられなかった。


---


 理由は、

 簡単だった。


 俺たちは、

 最短距離を通らない。


 安全な道も、

 効率的な道も、

 選ばない。


 “選ばれない道”を、

 淡々と歩く。


---


「……ねえ」


 ミレイアが、

 小声で言う。


「普通、

 逃げるなら

 急ぐでしょ」


「はい」


「でも、

 あんた、

 ゆっくりよね」


「急ぐと、

 判断を委ねることになります」


「誰に?」


「追う側に」


 彼女は、

 息を吐いた。


「ほんと、

 嫌な逃げ方」


---


 追跡部隊は、

 焦り始める。


「進路が読めない」


「目標が、

 “逃げている”

 ように見えない」


 それが、

 一番の問題だった。


---


 夕方。


 俺たちは、

 小さな集落に立ち寄った。


 名前も、

 地図にもない場所。


 だが、

 人はいる。


---


「泊めてほしい」


 俺は、

 普通に言った。


 集落の老人は、

 俺たちを見て、

 少し考え――

 頷いた。


「いいよ」


 理由は、

 聞かれなかった。


---


 追う側は、

 足を止める。


「……ここは?」


「ただの集落です」


「問題は?」


「ありません」


 それが、

 一番困る答えだった。


---


 夜。


 焚き火のそばで、

 ミレイアが言う。


「ねえ、レオン」


「はい」


「これ、

 いつ終わると思う?」


「追う理由が、

 なくなった時です」


「それって?」


「“危険”だと

 証明できなくなった時」


---


 視界の端に、

 淡い表示が浮かぶ。


《追跡強度:低下》

《目的不明化:進行中》


(……もう少しだ)


---


 追う者たちは、

 迷い始めていた。


 捕まえても、

 説明ができない。


 放置しても、

 問題が起きない。


 ――では、

 なぜ追っている?


---


 翌朝。


 集落は、

 いつも通りだった。


 俺たちは、

 普通に朝食をとり、

 普通に礼を言い、

 普通に立ち去る。


---


 追跡部隊は、

 それを遠くから見ていた。


「……ただの、

 旅人だな」


 誰かが、

 そう言った。


 その一言で、

 全てが崩れた。


---


 追う理由が、

 消えた。


 敵でも、

 象徴でも、

 反逆者でもない。


 ただ、

 捕まえる意味がない。


---


「……撤収だ」


 部隊長が、

 苦々しく言った。


「記録は?」


「異常なし」


「……それが、

 一番の異常だな」


---


 丘の向こうで、

 気配が消える。


 ミレイアが、

 小さく笑った。


「ざまぁ、

 って言っていい?」


「いいえ」


「え?」


「これは、

 世界の都合が

 追いつかなかっただけです」


 彼女は、

 肩をすくめた。


「ほんと、

 救いがないわね」


---


 俺たちは、

 また歩き出す。


 追う者はいない。


 逃げる必要もない。


 ただ――

 定義できなかったものが、

 世界の外へ滑り落ちただけだ。


 それが、

 追う者と、

 逃げる者の

 結末だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ