第28話 理解できないものは、危険になる
結論が出るのに、
それほど時間はかからなかった。
人は、
理解できないものを
長く放置しない。
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王都。
小さな会議室に、
王国、商会、宗教の代表が集められていた。
公式ではない。
だが、
“実務的”な場だ。
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「結果は、
揃いましたね」
商会の男が、
静かに言う。
「宗教は失敗」
「他国は模倣失敗」
「王国は、
内部崩壊中」
事実だけが、
淡々と並べられる。
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「問題は」
宗教側の代表が、
指を組む。
「なぜ、
あの辺境だけが
壊れないのか」
誰も、
答えられない。
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「原因は、
一つでしょう」
王国の官僚が言う。
「特定の人物の存在」
資料が、
机に置かれる。
名前は、
大きく書かれていない。
だが、
全員が知っている。
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「レオン・グレイ」
誰かが、
はっきり口にした。
空気が、
重くなる。
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「彼は、
指導者ではない」
商会代表が言う。
「権力も、
象徴性もない」
「だが、
影響力がある」
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「危険では?」
宗教代表が、
慎重に言葉を選ぶ。
「信仰も、
制度も、
通じない」
「人々が、
彼に従っているわけでもない」
だからこそ――
危険だ。
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「排除すべきか」
王国官僚が、
低い声で言う。
「……露骨すぎる」
商会が否定する。
「だが、
放置もできない」
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「隔離は?」
宗教代表が、
提案する。
「聖地管理名目で
別の場所へ」
「拒否されたら?」
「強制は、
問題になる」
沈黙。
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「……誘い直すのは?」
誰かが言う。
「権限を与え、
内側に戻す」
「拒否されたのでは?」
「ならば――」
言葉が、
途中で止まる。
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「結論は一つです」
王国官僚が、
淡々と言った。
「彼を、
“問題の外”に
出す」
「関与できない場所へ」
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それは、
排除と
同義だった。
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一方。
辺境の村では、
いつも通りの朝が来ていた。
子どもが走り、
大人が働き、
家畜が鳴く。
何も、
起きていない。
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「……ねえ」
ミレイアが、
低い声で言う。
「外、
騒がしくない?」
「はい」
俺も、
感じていた。
空気が、
変わっている。
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視界の端に、
赤みを帯びた表示が浮かぶ。
《警告》
《外部意図:排除》
《手段:未確定》
(……来たか)
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「どうする?」
ミレイアが、
俺を見る。
「逃げます」
即答だった。
「また?」
「はい」
「……村は?」
「ここは、
壊れません」
断言できた。
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「でも、
あんたがいなくなったら――」
「変わりません」
俺は、
村を見る。
「もう、
“依存されない状態”に
なっています」
それが、
一番の成果だった。
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夜。
俺は、
簡単な荷をまとめた。
ミレイアも、
何も言わずに手伝う。
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「ねえ」
彼女が言う。
「今回の敵、
誰だと思う?」
「……世界です」
正直な答え。
「分かりやすい悪役が
いなくなった」
「だから、
一番厄介です」
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外では、
風が吹いている。
辺境の静けさが、
わずかに揺れた。
だが、
壊れる兆しはない。
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理解できないものは、
危険になる。
危険なものは、
排除される。
それが、
世界の
合理だった。
そして――
その合理から
逃げる準備が、
今、整った。
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