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無能扱いで追放された俺、実はパーティが崩壊しないよう全部やってただけでした 〜戻ってこいと言われても、もう遅い〜  作者: 芋平


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第10話 それは、助けを求める声だった

 冒険者ギルドの応接室は、久しぶりに静かだった。


「……失礼します」


 扉を開けたのは、勇者アルディオだった。

 その後ろに、セシリアとリリア。

 ガルドはいない。


「どうぞ」


 ギルド長ボルドは、椅子に深く腰掛けたまま言った。


「今日は、どういう用件だ?」


 アルディオは一瞬、言葉に詰まった。

 いつもなら迷いなく口を開く男が、だ。


「……レオンのことで」


 その名前が出た瞬間、

 ボルドは小さく息を吐いた。


「来ると思っていた」


 それだけで、察していたことが分かる。


「俺たちは……」


 アルディオは、言葉を探す。


「少し、判断を誤ったかもしれない」


「“少し”か?」


 ボルドの声は、低く平坦だった。


「南部坑道の失敗。

 補給不足。

 負傷者の増加」


 指を一本ずつ折っていく。


「これで“少し”なら、

 本気で誤った時はどうなる?」


 アルディオは、反論できなかった。


 セシリアが、勇気を振り絞ったように言う。


「私……正直、怖いんです」


「ほう」


「前は、無理をしない判断をしてもらえてた。

 今は、自分で全部決めないといけない」


 声が、震えている。


「……それが、冒険者だ」


 ボルドは言った。


「支えがなくなっただけだ」


 リリアが、静かに口を開く。


「だからこそ、

 “支え”を切るべきじゃなかった」


 その言葉に、アルディオが目を伏せた。


「レオンに、戻ってきてもらえないか」


 ついに、アルディオは言った。


「謝る。

 条件も、できるだけ飲む」


 勇者が、頭を下げた。


 ボルドは、しばらく黙っていた。


「……条件、とは?」


「役割を明確にする。

 報酬配分も見直す。

 評価も――」


「遅いな」


 短く、切り捨てる。


「え……?」


「それは、

 切る前にやる話だ」


 ボルドの視線は、冷たかった。


「で、本人は?」


「……来ていない」


「だろうな」


 即答だった。


 その頃。


 下級ギルドの詰所では、

 いつも通りの朝が流れていた。


「レオン」


 ミレイアが、掲示板を見ながら言う。


「勇者パーティ、

 ギルド長に呼ばれてた」


「そうですか」


「……来ると思う?」


「何がですか」


「“戻ってこい”って話」


 俺は、少し考えた。


「可能性はあります」


「どうする?」


「行きません」


 即答だった。


 ミレイアは、少し驚いた顔をしてから、

 ふっと笑った。


「でしょうね」


 昼過ぎ。


 ギルド長ボルドから、

 短い伝言が届いた。


勇者パーティが、お前に会いたがっている。

応じるかどうかは、任せる。


 俺は、その紙を見て、

 静かに首を振った。


(会えば、“交渉”になる)


 それは、

 相手に「まだ選択肢がある」と思わせる行為だ。


 今は、違う。


 必要なのは、

 自分たちで判断し、失敗する時間だ。


 夜。


 ミレイアが、少し心配そうに言った。


「ねえ、レオン」


「はい」


「冷たすぎない?」


 俺は、少し考える。


「冷たいのは、

 切った時の方です」


「……」


「今は、

 結果が返ってきているだけです」


 ミレイアは、何も言わなかった。


 ただ、

 その言葉を否定もしなかった。


 一方、勇者パーティの宿。


「……断られた」


 アルディオの声は、疲れていた。


「会ってすら、もらえない……」


 セシリアは、唇を噛む。


「私……

 ひどいこと、言いました」


 リリアは、静かに言った。


「気づくのが遅すぎただけよ」


「……戻ってきてくれれば」


「戻らないわ」


 リリアは断言した。


「だって、

 戻る理由が、もう“助けて”しか残ってない」


 その言葉は、重かった。


 同じ夜。


 詰所の天井を見上げながら、

 俺は考えていた。


(これで、選択肢は一つ減った)


 視界の端に、淡い文字が浮かぶ。


《後悔値:上昇》

《依存構造:崩壊中》

《介入推奨:なし》


(……世界も、そう言っている)


 俺は、目を閉じた。


 もう、引き返せない。


 だがそれは、

 誰かを突き落とした結果ではない。


 自分たちで、手を離しただけだ。


 ざまぁは、

 声を上げず、

 淡々と進んでいた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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