第22話:神が変わった理由:停滞の罪と権能の委譲
1. 審問の完了と神の言葉
神尾卓が、ルシフェルの復活と七つの英知の配置を完了させた後、新しき神の玉座の前で深々と頭を下げた。
「神様。これで、全ての罪は英知へと昇華されました。慈愛の精神が、停滞の秩序を破り、進化の仕組みを再構築しました。」
新しき神は、神尾の功績を称えながら、自らの存在の根本的な変化について語り始めた。
「神尾 卓よ。お前の働きは、神々の世界における歴史的な転換点だ。お前が審問したのは、七つの悪魔ではない。それは、旧き神自身が抱え込んだ七つの病だ。」
2. 旧き神の「傲慢」と「停滞」の罪
新しき神は、旧き神が権能を譲り渡した真の理由を明かした。それは、神自身が、七つの大罪の原型を内包してしまったことにあった。
「旧き神は、絶対的な存在であることに安住し、進化を恐れた。それが最大の罪、傲慢となった。**『我こそが全てであり、私の秩序は完璧である』**という傲慢が、七つの大罪を生んだのだ。」
嫉妬: 異なる愛の形を恐れ、信仰の独占を試みた。
強欲: 富の創造を恐れ、全能性を守ろうとした。
怠惰: 変化を避け、停滞を選んだ。
「そして、その傲慢と停滞を極めた結果、旧き神は**『世界に一切干渉しない』という究極の怠惰**に陥った。もはや、自らの手で世界を正す能力を失っていたのだ。」
3. 新しき神の誕生と権能の委譲
「私は、旧き神の意識から、『進化と慈愛』というただ一つの願いだけを抽出して誕生した、**『神の良心』**そのものだ。旧き神は、自らの失敗を認めたが、自らの罪の産物である七つの悪魔を裁くことはできなかった。なぜなら、彼らへの断罪は、神自身の否定に他ならなかったからだ。」
新しき神は、玉座に座しながらも、その光を神尾に向けた。
「ゆえに、旧き神は、自らの権能を、『慈愛と平静』という人間的な美徳を持つお前に託した。神ではない、外部の視点。停滞を嫌い、共存の仕組みを創るお前の希望こそが、神を、そして世界を救う唯一の道だったのだ。」
神尾卓は、神々の世界における最大のタブー、すなわち神の失敗と神の交代劇の真相を知り、深く息を吐いた。彼の審問は、単なる人事異動ではなく、世界を再起動させるための、神の良心による外科手術だったのだ。
「承知いたしました、神様。あなたの勇気と、旧き神の反省が、この進化の仕組みを可能にしました。これより、ルシフェルを核に、新しい天界の時代が始まります。」