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第2話:第六の罪:怠惰の天才と、天界の働き方改革

1. 審問開始とアジェンダの提示

神尾卓がデスクに着席してから五分。玉座に座す新しき神は、神尾がタブレットで撮った会議場の写真を確認し終える様子もなく、静かに口を開いた。

「神尾 卓よ。歓迎する。我々は時間に無駄をかけたくない。審問を開始する。」

「ありがとうございます。」神尾は冷静に答えた。「しかし、その前にアジェンダを共有させていただけますか? 私は時間の無駄を防ぐため、各審問を15分に収めるという効率的な目標を設定したいのですが。」

新しき神は微かに笑った。その笑みには、**「急いでいる」**と言ったにもかかわらず、神尾の時間軸を完全に超越した、悠久の暇が滲んでいた。

「承認する。お前の正義と平静を尊重しよう。だが、我々の時間には始まりも終わりもない。我々にとっての**『無駄をかけたくない』とは、お前の『定時厳守』**とは意味が違う。」

「無限であることが、停滞の温床です。」神尾は優しく、しかし断固として切り返した。「無限の納期は、無限の非効率を生みます。私は、この審問を定刻通りに進め、最高の成果を導きます。」

巨大な会議場の中心に、一筋の光が差し込む。最初の審問対象、第六の罪:怠惰ベルフェゴールが召喚された。彼は、どこか気だるげで、いかにも無関心な雰囲気を纏っていた。

2. 第六の罪:怠惰ベルフェゴールの召喚

「ベルフェゴール。あなたの罪は、神が与えた無条件の労役の拒否。それを怠惰と断じられた。」新しき神が告げる。

神尾はタブレットのデータを操作しながら、冷静に口を開いた。

「ベルフェゴール。あなたの怠惰は、旧き神の組織では絶対的服従の拒否と見なされました。しかし、私はあなたの記録を精査しました。特に、**『聖なる祭壇の砂運び』**の任務について伺います。この業務は、1000年にわたり、毎日砂を100往復運ぶというものでしたね。」

ベルフェゴールは、初めて神尾の存在を認識したように、わずかに目を開いた。彼の表情に疲弊した苛立ちが浮かぶ。

「...あの任務は、無意味でした。砂を運んでも、祭壇の横から吹き付ける**『神の風』で流れ落ちるだけ。私は『なぜ、その業務が必要なのか?』と問いました。回答は『神の秩序だから』。彼らは、『無駄な労役』こそが服従の証明**だと信じていた。」

ベルフェゴールは、声を荒げた。「だから私は、砂を運ぶ代わりに、祭壇の横に壁を築き、風を防ぐという改善策を提案しました。その壁は、一日の労力で千年分の砂運びを不要にした。私は、残りの時間を次の非効率な業務の改善のために使いました。これが怠惰ですか?」

神尾は深く頷いた。彼の目は、賢明な判断を評価する光を帯びていた。

「いいえ。それは極度の効率主義と、賢明な判断の極致です。あなたは、真に価値あるもの以外に、労力を注ぐことを極度に嫌悪した。旧き神は、あなたの論理が、自らの非効率な秩序を根底から破壊し、絶対的な服従の規範を崩壊させることを恐れたのです。」

3. 次なるステップへの移行

神尾は、ベルフェゴールの発言を受け、さらに詳細な過去の功績を掘り下げるべく、タブレットの次のページを開いた。

「ありがとうございます。ベルフェゴール。あなたの過去の記録には、**『神の定めた手順』を無視した結果、驚異的な成果を生み出した事例が他にも多数見受けられます。次に、その『隠された功績』**について、さらに詳しく伺いたい。」

神尾は、ベルフェゴールとの対話を通じて、彼の才能を英知として完全に再評価する意志を固めていた。

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