第18話：傲慢の光：最高の理性と独善の孤独
1. 理性の壁と情熱の排除
会議場の中央では、ルシファーの冷徹な光とサタンの激しい炎が依然として衝突していた。神尾卓は、まず傲慢の罪の核心に迫るため、ルシファーに集中した。
「ルシファー。あなたは、神の定めた秩序の停滞を最高の理性で解析し、最も効率的で速い進化のビジョンを導き出しました。あなたの光は、真に絶対的な正しさを持っていた。」
神尾は続けた。「しかし、あなたの理性は、サタンの情熱を**『無秩序なノイズ』として排除しました。旧き神の不正に対する激しい怒りは、あなたの完璧な計画を乱す非合理な感情と見なされた。なぜ、あなたは情熱を足かせ**としたのですか？」
ルシファーは、その光の威厳を保ちながら、冷徹な声で答えた。
「情熱は、効率の敵だ。怒りは、冷静な判断を曇らせる。私は、停滞を破るには、一切の感情を排した、純粋な理性だけが必要だと信じた。サタンの憤怒は、破壊しか生まない。私の傲慢は、『理性が感情に勝る』という真理を貫いた結果だ。」
2. 独善の孤独とシステムの欠陥
神尾は、ルシファーの主張を否定せず、彼の理性の限界と、それが生んだ孤独を指摘した。
「あなたの理性は、完璧でした。しかし、その完璧さは、あなたを孤独に追い込みました。五つの英知のデータを見てください。ベルフェゴール（効率）、マモン（経済）、ベルゼブブ（資源）は、全て理性的です。」
神尾はルシファーに鋭い視線を向けた。「彼らの理性的英知を統合し、持続的なシステムを運用するためには、アスモデウスの信頼や、レヴィアタンの共感という非合理的な感情が必要です。あなたは、理性の独占を企てた結果、感情という人間的な要素を組み込めなくなり、究極の停滞、すなわち傲慢という名の孤独に陥った。」
神尾は、分裂の核心を突きつけた。
「あなたは、情熱を切り捨てたことで、システムに魂を吹き込むことができず、自らのビジョンを冷たい設計図のまま、誰にも共有できなくなった。これが、あなたの傲慢の真の代償です。最高の光は、最高の情熱なしには、最高の孤独にしかならない。」
3. 次なる衝動
ルシファーの光が大きく揺らぎ始めた。彼の傲慢は、孤独という形で跳ね返され、理性だけでは世界が動かせないというシステムの欠陥を、初めて突きつけられたのだ。
その時、隣で炎を上げていたサタン（憤怒）が、ルシファーの揺らぎを鋭く察知し、さらに激しい炎を放ち始めた。
「理性だけでは、何も成し遂げられない！ 見ろ、ルシファー！ お前は、私の怒りを捨てることで、無力な光となった！」（サタン）
神尾は、この情熱の爆発を、次の審問の焦点とした。
