第17話:ルシフェルの分裂:失われた光の定義
1. 究極の審問と衝撃の事実
神尾卓は、五つの大罪(怠惰、暴食、嫉妬、色欲、強欲)の審問を終え、その英知を新しい天界の基盤に組み込んだ。残るは、最も強大で危険な二つの罪、傲慢と憤怒のみ。神尾は、彼らの膨大な記録の断片を精査する中で、ある根源的な真実に辿り着いていた。
「神様。彼らは、二つの罪ではありません。彼らは、元々一つの存在、ルシフェルでした。神に最も愛され、最高の理性と最高の情熱、完全なる光を併せ持つ、神の右腕として創造された存在です。」
新しき神の玉座に、深い静寂が訪れる。神尾の言葉は、旧き神が最大の英知を恐れ、分裂という形で存在そのものを破壊し、隠蔽したことを示唆していた。
「ルシフェルは、旧き神の停滞と不公平という組織的な矛盾を前に、自己の調和を保てなくなったのです。**『変革のための理性』が、『激しい怒り』**と相克し、極限に達した結果、傲慢と憤怒に分裂した。」
2. 光と炎の再会
神尾は、最後のミッションが、この失われた調和を取り戻すことだと悟った。
「神様。この分裂した二つの衝動を同時に召喚してください。彼らは、共存ではなく、再統合されるべきです。」
神の言葉と共に、会議場の中央に、ルシファーの冷徹な光(理性)とサタンの激しい炎(情熱)が、一つの核を挟んで召喚された。二つのエネルギーは、互いに憎しみ合うように衝突しながらも、引かれ合う、強い引力を放っていた。
3. 分裂の定義と審問の目的
神尾卓は、二人の悪魔の間に立ち、その相克するエネルギーを真正面から受け止めた。
「傲慢、憤怒。あなた方は、自己の片割れと向き合っています。あなた方の罪の本質は、分裂したことで、完全なる理性と完全なる情熱を失い、不完全な衝動となったことです。」
神尾はまず、理性の欠落を指摘した。
「ルシファー。あなたは、理性だけでは、情熱なき空虚なビジョンに耐えられなかった。その孤独は、神の記録の行間に滲んでいます。あなたは、自分の片割れであるサタンの情熱で、その空虚さを埋められますか?」
次に、情熱の欠落を指摘した。
「サタン。あなたの怒りは、理性なき無秩序な破壊となり、新しい秩序を生み出せなかったことで、無力感を覚えた。あなたは、自分の片割れであるルシファーの光で、その破壊の衝動を持続的な変革という目的に変えられますか?」
二人は、自己の不完全さと、片割れを必要とする矛盾した感情に、激しく動揺した。