第13話:第三の罪:色欲の最終配置と信頼の構築
1. 理性による力の制御
神尾卓は、アスモデウスが自身の魅力の持つ責任、すなわち過剰な依存性を初めて認識したことを確認した。彼の才能を私的な愛の引力から公的な信頼構築へと昇華させる時が来た。
「アスモデウス。あなたの力は、両刃の剣でした。無目的に愛を求めた結果、他者に過剰な依存を生み出し、旧き神に色欲という口実を与えた。」神尾は、アスモデウスに平静の美徳をもって語りかけた。
「しかし、理性をもってその力を制御し、『協力と共存』という明確な目的のために使えば、あなたの魅力は天界最高の外交武器となります。あなたは、愛されることを目的とするのではなく、信頼を構築することを責務としなければならない。」
アスモデウスは、深く頷いた。彼の表情は、無邪気な愛されキャラから、責任を負う者の真剣なものへと変わっていた。
「...承知しました、神尾 卓。私の魅力を、愛されることという個人的な渇望を満たすためではなく、天界全体の協力と平和という大義のために使います。私は、信頼を構築し、協調性を生み出します。」
2. 新しき神の裁定と親善大使の任命
神尾は、アスモデウスの才能が、天界に不可欠な外交と協調性の柱となり得ると確信し、新しき神に裁定を求めた。
「神様。アスモデウスの色欲は、『いかなる敵対者からも信頼を引き出す』ための最高の外交力です。彼の魅力を、純潔という理性のもと、信頼と協力を築く力へと昇華させます。」
新しき神は、その裁定を是とした。
「アスモデウスの色欲は、『信頼と協力を創造する』ための外交の英知へと昇華せよ。これよりお前を天界広報・親善大使に任じる。」
神尾はアスモデウスに向き直り、具体的なミッションを提示した。
「配置完了です。アスモデウス。あなたの最初のミッションは、天界の七つの部門間に存在する残存する不信感の解消です。ベルフェゴール(怠惰)の効率化、ベルゼブブ(暴食)の分配、レヴィアタン(嫉妬)の共感調律。これら改革の摩擦を、あなたの魅力で信頼へと変えてください。純潔な愛とは、無条件の信頼を意味します。」
3. 次なる罪の準備
アスモデウスは、神尾卓の言葉を受け、新たな役割に強い決意を抱いた。彼は光の中に消え、天界の外交と広報という、最も信頼を要する部門へと配属された。
神尾は、アスモデウスの審問を終え、天界のシステム、リソース、そして協調性の三つの柱を、確かな仲間によって固めたことに、静かな満足を覚えた。
彼は、タブレットに「第三の罪:配置完了」とチェックを入れ、次のデータを開いた。
「完璧です。次は、第二の罪、強欲の審問に移ります。彼の創造主を超える経済的才能は、神の全能性の否定に繋がった。彼の富への執着を、宇宙経済圏の最高責任者として、慈愛の精神で分配する力へと再評価します。」
神尾は、審問官としての希望と勇気を胸に、次の**「居場所作り」**の作業に取り掛かった。