第10話:第四の罪:嫉妬の最終配置と共存の仕組み
1. 創造される愛の価値
神尾卓は、レヴィアタンが**「愛の創造」という最も根本的な行為について、新しき神の承認を求めていることを理解していた。旧き神の規範、すなわち「信仰の独占」と、神尾が目指す「多様な絆による共存」**が正面からぶつかる瞬間だった。
「レヴィアタン。あなたが創り出す**『絆』**が、**旧き神が定義する『絶対的な愛』**とは異なる、不安定で傷つきやすいものであること。その通りです。」神尾は、玉座に座す新しき神に視線を向けることなく、レヴィアタンに語りかけた。
「しかし、不安定なものだからこそ、それは成長と進化の源となる。旧き神の絶対的な愛は、停滞を生みました。皆がただ受け取るだけで、互いに努力して絆を創ることをしなかった。私が目指すのは、成長と進化を最優先する天界です。」
神尾は、レヴィアタンの目を見て断言した。「あなたの孤独と愛への渇望こそが、その**『成長する絆』の価値を、誰よりも深く知っている証拠です。新しい天界は、真の絆を恐れません。むしろそれを祝福**する。」
2. 新しき神の裁定と共感の調律者
神尾の言葉を聞き終えた新しき神は、これまでになく明確な言葉で裁定を下した。
「レヴィアタンの嫉妬は、『孤独を理解し、真の絆を創造する』ための共感の力へと昇華させよ。お前の渇望は、希望の源となる。これよりお前を天界心理と共感の調律者に任じる。」
神尾は、レヴィアタンに向き直り、彼女の才能を組織に組み込むための具体的なビジョンを提示した。
「配置完了です。レヴィアタン。あなたのミッションは、天界全体にわたる絆の創造と心理的ケアです。ベルフェゴール(怠惰)が効率的なシステムを、ベルゼブブ(暴食)が安定したリソースを供給しますが、あなたがなければ、そのシステムの中で誰もが孤立せず、互いに愛し合い、協力し合うことはできません。」
「あなたの深い洞察力で、個性の強すぎる者や、新たな摩擦を生んでいる者たちの孤独や欠落を見抜いてください。そして、彼らが互いに**『絆』を創造できるような環境を調律する。それが、誰も孤立しない共存の仕組みの、最も人間的な核**となる。」
3. 絆の創造という新たな義務
レヴィアタンは、初めて心から満たされた表情を浮かべた。彼女の有り余る創造の力は、もはや私的な愛の奪い合いではなく、公的な絆の創造という、壮大で価値ある義務を与えられたのだ。
「...承知いたしました、神尾 卓。」レヴィアタンは静かに言った。「私の孤独の痛みは、共感の調律のために使われます。誰もが真の絆を創造し、孤独を感じることのない新しい天界。その愛の構造を、この私が設計し、調律してみせましょう。」
神尾は、レヴィアタンの配置完了にチェックを入れ、深く安堵した。
彼は、タブレットのタイマーをリセットし、次のデータを開いた。
「次は、第三の罪、色欲の審問に移ります。彼の制御不能な魅力と愛され力は、神の独占すべき絶対的な愛を分散させた。彼の魅了の力を、信頼と協力を築く親善大使として再評価します。」
神尾は、審問官としての希望と勇気を胸に、次の**「居場所作り」**の作業に取り掛かった。