第3話 授業開始
「授業ってさ、何するの?」
初授業の日、湊は制服に着替えながら飛鳥に尋ねる。
「数学とか古典とか普通の授業だよ」
「へー、なんか普通」
「ま、それだけじゃないけどねぇ」
含みのある笑みを浮かべて飛鳥は言った。
「HRを始めるわよ。早く席についてね」
担任の女性教師が生徒たちに声をかける。
15人クラスでそれが6学年。
と言っても4年以上は前の世界でいう大学のようなものだが。
「今日は新入生を紹介しまーす」
その声で湊は教室に入って先生の横に立った。
なんだか、良くあるなぁ。
「千角 湊です。よろしくお願いします」
「そこまで気を張らなくて良いからね。席は自由に選んで」
教室の後ろに使われていない机と椅子を持って来て飛鳥の席の横に置く。
「あ、千角くん。放課後居残ってね」
「え?分かりました」
「…補習ってことだよ」
ボソッと飛鳥が囁いてくる。
お疲れ様〜と顔が語っている。
補習ってこっちの世界にもあるのかぁ…。
「君はあっちの世界でいう12月にここに転入して来た。つまりここの1年生の内容を半分以上勉強していないんだ。だから、土日祝日関係なくオール補習ってこと」
飛鳥の説明に納得する湊。
「それは…来るタイミング間違えたかな?」
「そうかもね」
2人が小声で話しているうちにHRが終わっていた。
「1時間目は魔古典だよ」
飛鳥が教えてくれるが、違和感に気づく。
「教科書って必要ないの?」
「ない。ここは自由だからね」
自由…な授業?
分からない。
「始まったら理解できるからさ」
ものすごい良い笑顔で飛鳥は言ってくれるが、正直ここの世界の理がよく分からない。
「授業始めるぞ」
いかつい顔をした先生が教室に入ってくる。
「今日は魔術を使って魔古典を読み解く授業だ」
そういう時生徒たちは胸の前あたりで拳を握る。
読み解きたい古典を選ぶらしい。
てか、分からん。
魔古典って普通の古典とは文字の違いが大き過ぎる。
そりゃ、あっちの世界の古典でも文字を読めないけど…もはや何語かすら分からない。
この世界の文字はあっちの文字に似ているので読めなくもないが。
「どうしようか」
「分からないでしょ。だから、魔法を使うんだ」
見ててごらんと言わんばかりに言う。
「この読み解きたい文が書いてある紙に魔力を当てて唱える。“ディサイファー”」
すると、空中に現代語訳が記されていく。
綺麗な文章だ。
「おぉ!飛鳥くんの現代語訳は繊細さが表れている」古典の先生が飛鳥を褒める。
現代語訳に個性が出るのか。
近くを見ると、たったの一言で記されている文を空中に浮かべている人がいた。
なるほど…。
「湊くんもやってみてよ」
来たばかりで、魔法が使えるのだろうか。
でも、きっとリキの言う通りならばみんな使えるものだ。
そのためにみんなはここの学園に通っている。
「けど、魔力を込めるってどうやって…」
「神経をそこに集中させて力を込めるんだよ。こう、筋肉に力を入れる時みたいに」
分かりやすーい。
さすがだなぁ、と感心した。
感心している場合じゃなくて、試してみないと。
指に力を込めて、紙に指を滑らせる。
「ディサイファー」
すると、空中に現代語訳が現れる。
「ほぉ、なんだって〜」
興味本位で集まって来たクラスメート達。
本来、現代語訳にするのならば
“貴方の声を聞きたいがために三里先から歩いて来たわ。けれどもそこには彼はいない。なんて…彼がここにいないことは分かっているはずなのに”
と、簡単に言うとこんな風な恋の詩なのだが…。
「“ワタシ 彼アイタイのに 彼はワタシより 元カノの方がいいんだ 酷い”?」
飛鳥が読みながら最後の方は疑問だらけの顔になった。
「なんで、こんな儚い恋が元カノに嫉妬しているような現代語訳になるんだろう」
飛鳥が呆れ顔で呟く。
「ごめん。昨日見た漫画のヒロインのことがチラついて」
「魔法はその人の性格を如実に表すんだ」
先生が本当に呆れた様子で説明する。
「とりあえず、できたからいいか」
そう言って引き続き授業に戻った先生だったが、湊はそれからまた、変な魔法しか出さなかった。
___放課後___
「補習って何をするんですか?」
「魔法の基礎中の基礎。3歳の時に習う魔法の出し方です」
満面の笑みで言ってくれるが、3歳からの授業って年相応には当分ならなそうである。
ありがとうございました。
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