第1話 始まりのおはなし
「うっし、やってやろうじゃん!」
千角 湊は満面の笑みで気合を入れた。
___さかのぼること1ヶ月前___
「なんか魔法的な非現実的なものないかなぁ」
誰1人としていない塾の自習室で呟いた。
現実逃避がしたいわけではない。
そういう世界が見たいだけである。
そして、その世界でチームレベルで無双したいのだ。
あまりかっこいいと言われることもない見た目にそばかす、特にこれと言って秀でたところもない。
そんな自分に劣等感を感じたのでちょっとでも良いところを(誰にともなく)見せたいので無双したいという夢を抱いたのだ。
(やはり、現実逃避かもしれない…)
「検索してみよ」
湊はスマホで魔法 リアル 何かないか?と調べてみると秘術館というものが出てきた。
ホームページを開いてみると、秘術館では魔法の紹介を行っている、と簡単に言うとそう書かれていた。
…行ってみようかな。
早速帰りに行ってみることにした。
「え、えぇぇぇぇぇぇえ〜」
その秘術館に来てみた湊は目を剥く。
「ここか…?」
洋風の今にも潰れそうな屋敷の目の前で湊は立ち尽くして唖然とした。
「いらっしゃいませ。秘術館へ」
その声に驚いていると
鬱蒼とした屋敷からゆっくりと少年が出てきた。
「貴方も魔術にご興味がおありなのでしょう?」
「うん。けど、なんか…」
「ごめんなさい。経営費が足りなくて…リノベーションする余裕がないんです」
10歳くらいの少年にしてはなんか…大人でかっこいい。
「では、潰れそうで不安かもしれませんが中へ」
「あ、うん」
少年に手を引かれて中に入る。
正直、壁を少し叩いたら全壊しそうなので怖い。
「魔法に興味がある方は大抵現実にあるとは思っておりませんので、こちらに来られる方は少ないのです」
「そりゃ、そうだよね〜」
「ここに来た貴方には言えませんね」
「冒険心で来ただけだよ」
「そうですか。なら何を見せましょうか」
少年をぎゅっと拳を握るとパッと開いた。
すると、水の塊が出て来て宙に浮かび上がる。
指の先を動かすと水の形が変わっていった。
「おぉ〜」
「こんなの初歩ですよ。少し上達すると」
少年は指を2本で宙に円を描いた。
すると、その線が円になった瞬間その円に炎が走った。
「おぉ!」
「炎は体温から作り出します。体温が低いと炎は作れません」
「すごい!」
素直に感動していると少年が少しはにかんだ。
褒められて照れているようで可愛い。
「貴方も…魔法使えるようになりたいですか?」
上目遣いで見てくるのがまた可愛い。
「もちろん!」
「じゃあ、決まりです。僕の名前はリキです。君は?」
「千角 湊だよ。よろしくね」
「よろしくお願いします。湊くん」
握手をした2人。
「さてと、湊くん。魔法を使うなら異世界に行かなければ行けないのですが、覚悟はおありで?」
異世界…良い響きだ。
「うん!」
「それじゃあ、僕と手を握ってください」
純粋な顔で疑問を訴えたつもりだったのだが、リキにはそうは捉えられなかったらしい。
「…勘違いしないでくださいね」
残念ながらショタコンではない。
「それじゃあ、異世界に行きますから離さないでください」
その瞬間、眩しい光に包まれた。
「湊くん。起きて」
「…ん」
目を覚ました湊はゆっくりと目を開けた。
すると、見慣れない顔の青年?が顔を覗き込んでいた。
「湊くん。おはよ」
「誰?」
「…あ、分かんないですよね。リキですよ」
リキ…リキ?リキ…。
「リキって、え!?」
「あっちの世界に行くと、魔力が働かないせいか縮んでしまって…こちらが真の姿とでも言うべきでしょうか」
爽やかイケメンの顔をしたリキは多分、湊と同い年くらいだろう。
それにしては大人っぽいけど。
「そして、こちらが魔世界です」
両手を大きく広げてみせるリキ。
「ここ…?」
周りを見渡した湊は驚いてしまった。
なぜなら、今までいた世界となんら変わらないように見えたから。
「驚いていますねぇ。ここは並行世界です。さっきいた世界とここの世界は鏡合わせのようになっていて、一見同じように見えるんですよ」
パラレルワールドっていうことか?
湊はちょっとだけ腑に落ちる。
「そして、この世界とさっきの世界の根本的な違いは魔法があるか、ないかということです」
リキはニッと笑みを浮かべた。
「…えー」
驚きすぎてそれ以上言葉が出て来なかった。
だって、もっとファンタジー的な異世界を想像していたんだから。
森や中世の街並みなどを期待していた湊は軽く裏切られた気持ちになった。
「まぁ、この世界に慣れるのは後にして…ついて来てくださいね。湊くん」
リキが歩いて行く方に着いて行った湊。
本当に特に変わりがない。
見慣れた街並みだけど、どこか雰囲気が違う。
「この世界に来た人は、まずここで勉強してもらっているのです」
と、湊が通っていた高校があった場所にある前の世界とは違う建物の学校の目の前に来た。
「新入生大歓迎。魔術教育学園へようこそ」
リキはその黄昏色に染まる校舎を見ながら呟いた。
「楽しい学生生活を送りましょう。湊くん」
なにやら、波乱な毎日が待っていそうだ。
ありがとうございました!!
次回もよろしくお願いします!




