4話-ハクア視点-
*ハクア視点に変わります(短いです)
一方、ハクアは高等科に進学し楽しく充実した日々を送っていた。
「テスト終わったぁぁあ!」
「良かったな」
春のテストが終わって騒がしい教室の中、ハクアは早足で目当ての場所に向かう。
「おいおーい!ハクアー?」
「ハァなんだ?」
「いーの?皇女様いるんじゃなかったのー?娼館はまずいんじゃないのー?」
「サロンと言え」
ルームメイトの声は少し低くてハクアは少し怯むものの、表情は崩さない。
「ハクアあんなどうしようもない先輩達の言いなりになるのはよせよ」
「…出世の為だ」
ハクアが高等科に入って所属したのは先輩の推薦でしか入れない学生会クラブ。
学校規則などをまとめたりする学生会クラブは会員の先輩達も1人しか推薦できず入るだけで周りの態度が変わってくる特別な、クラブだ。
何故か誘われ二つ返事で入ったハクアだがルームメイトのクウルが何を心配しているかはわかっている。
「金ならある」
「それは皇女様の金だろ?」
違う、と言えずにハクアはクウルの腕を振り払って先輩が待つ馬車に向かう。
サロンは1人の美しい先生が、男性にいろいろな授業を行う――要するに最高級の娼館。
一晩で100万が飛んでいく世界では日中に集まり話すだけでも数十万単位で消えていく。
よほどの金持ちでない限り通えないが今のハクアは定期的に通えるほどの金があった。
――バレた様子はないな
文武共に成績優秀となった場合、一定の所得制限条件を満たせば学費と寮の代金は免除となる。
ハクアは条件を満たしていた。
頭がよく野心に溢れるハクアは高位貴族達だけが募れるというステータスと美しい女性の魅力には抗えなかった。
――これは必要な知識だ
決して裏切り行為ではない。初めての行為で問題が起きない様男性は女性をリードしてあげるのは当然であるしソフィア皇女はそれを咎める様な人ではない。
『どんな花が咲くのでしょうか,毎日眺めながらハクアの帰りを待っています-ソフィア』
美しい字で書かれた手紙を見る時にチクッとする心に見ないフリをした。
――どんな顔して会えばいい
ソフィアに対する罪悪感と決められた婚約者を愛さなければという重圧。
ハクアは先生に教えられた方法で贈った花の種が永遠に咲かなければ良いのにと願って,願った自分に嫌悪した。