【騙した女と騙された男②(The woman who deceived and the man who was deceived.)】
俺はリズがボートで脱出するのが分かっていたので、船着き場の手前にある小道から彼女たち出て来るのを待ち、丁度通り過ぎたあたりで銃を向けて声をかけた。
「よう、リズ。久し振りだな」
「マックス! アナタ、どうしてココに⁉」
急に現れた俺に驚くリズ。
俺は、そのリズに拳銃を向けた。
「な、なにをするつもり⁉」
「それは、コッチのセリフだ。さあ、拳銃を捨てろ!」
「ちょっと待って!アナタなにか勘違いを……」
「黙って拳銃を捨てろ!さもないと痛い目に遭うぞ‼」
リズは、おとなしく持っていた拳銃を捨てた。
「お前たちもだ‼ そしてダイアナを自由にしろ!」
ダイアナを拘束していた2人も、リズに従って持っていた拳銃を捨て、ダイアナを拘束していた縄を解いた。
「ありがとうマックス。マフィアに掴まって、殺されるところだったわ」
ダイアナがそう言うと、リズはマフィアはダイアナの方で私たちはFBIだと言った。
「FBI? そのFBIがマフィアのアジトに乗り込むのに、たった3人と言うのは話がおかし過ぎないか? 手入れがあるなら、もっと大勢で乗り込むはずだろう。違うか?」
リズは俺の問いに、本体の到着よりマフィアが早くココを撤収して逃げることになったからだと答えた。
俺は、それは一体どういう事かと聞くと、彼女はハユンがアナタに掴まったからだと答えた。
なるほど。
ハユンを始末するために、あの用心棒のデコボココンビを差し向けたのはいいが、戻ってこないのを心配して奴らは様子を見に行ったってわけか。
「様子を見に行ったら、警察が来ていて、彼女が全てを話す前に……って分けか」
「そ、そうよ。そこまで分かっているなら銃を降ろして!」
「駄目だ」
「何故⁉」
「ハユンから全て聞いた。君がダイアナの後釜を狙っていたことをな。そして君はダイアナの旦那があの店の裏帳簿に気付いてマフィアを脅していた事を知り、それを利用してダイアナを堕とし入れたって訳だ」
「裏帳簿……そんなことまで調べながら……でも後釜なんて、それはハユンの勘違いよ!」
「俺はこう見えても元NY市警の刑事で今は探偵をやっている。……君は俺を甘く見過ぎたようだな」
「違うわ!私はFBIで、潜入捜査を」
「その話は、警察が来てから話せ」
「け、警察が来るの⁉」
「ああ、バッチリな。それも大部隊を引き連れて来る」
「ダイアナ、彼らが他に武器を隠し持っていないかチェックして、武器を回収してコッチにおいで」
「……わかったわ」
ダイアナは、ホッとしたのかニヤリと口角を上げて、俺の指示に従った。
「やめなさい!マックス、アナタ何か酷い勘違いをしているわ。本当に私たちはFBIで、マフィアはコノ女の方よ‼」
「だったらバッチを見せろ!」
「潜入捜査なんだから、そんなもの持っていないわ……」
「なら、後で来る警察に調べてもらうんだな」
「……」
俺がリズと話している間にダイアナは彼らのボディーチェックを済ませ、地面に落ちていた拳銃を拾って俺のところに来て言った「これから、どうするつもりなの?」と。
俺がこの状態のまま警察が来るまで待つことと、その間危ないから俺の後ろに居るように告げると彼女は指示通り俺の後ろに来て言った。
「ありがとう。アナタ優しいのね」と。




