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【マックスの決意(Max's decision)】

 グレッグ・メロンを追っていた3人が殺された忌まわしい事件現場ロイドビーチの反対側にある砂州に着く。

 俺は一旦車を止めて途中の店で買った花束を持って車を降り、あの背の低い男が死んだ場所に行き煙草に火を点け一服吸ったあとの煙草と一緒にそこへ添えた。

 潮風がヤツの魂を誘うように吹いた。

 ヤツがどの様な人生を歩んできたのかは知らないが、ヤンチャして自分は無双だと思っていたのはあの日すれ違う車の中で一瞬見たその表情から伺い知ることは出来る。

 だが誰しも無双じゃない。

 もちろん俺だって同じ。

 無双になれるのはフィクションの世界の中だけのこと。

 ヤツも撃たれて初めてそのことに気付いたはず。

 しかし気付くのが遅すぎた……。

 一緒に車を降りたレベッカが、ヤツのためにお祈りを捧げてくれた。


 車に戻り、マフィアのアジトがあるロイドネックに入る。

 アジトの場所は知らないが、おおよその見当は着く。

 砂州で死んだ3人を殺した奴らはボートで来たわけだから、そのボートがある場所。

 もしくはボートを係留できる場所の近くあるやかたが、マフィアのアジトだろう。

 ロイドネックには、島を縦に3分割するように中央が自然保護区になっているから、アジトがあるのは島の東側か西側のどちらか。

 俺は先ず、砂州から近い西側から探すことにした。


 一番近いフォートヒルビーチの港に行ったが、そこにはあのボートは無かった。

 車を降りて北西に広がる砂浜を眺めると、2つのプライベート用の船着き場が見えたが、そこにもあのボートは見当たらない。

 再び車に戻り、今度はその先にあるビーチの確認をしたが、そこにもボートは無かった。

 更に先に進みザ・サンド・ホールのビーチも見たが、そこにもない。

 これで島の西側の確認は終わった。

 あとは自然保護区を越えた東側を探すだけ。


「あ、あの、もしボートが出ていたら……ス、スミマセン。素人なのに、く、口出しをして……」

 車に戻った時、助手席にチョコンと座っていたレベッカが申し訳なさそうに言った。

 たしかにレベッカの言う通りだけど……。

 この捜査方法ではレベッカが言う通り、穴があるのは分かっているが、彼女の安全を考えるとコレしか方法は無い。


「わ、私の安全を考えてくれているのは分かりますし、私はそれを有難く思います、ですがそのことを申し訳なくも思っています。だから、お願いですから私のことは気にしないで、捜査に集中してください」

「き、気にしないと言われても」

 その後に付けたかった言葉を添えることは出来なかった。

 気にするなと言われても、気にしないわけにはいかない。

 俺の気持ちの中で今一番大切なことはレベッカの安全。

 正直、チャイナマフィアなんて、どうでもいい。

 レベッカの安全を守りつつ、捕らえられているダイアナを救出できれば、それでいいんだ。


 戸惑っている俺の様子を察したレベッカが、今度はハッキリとした口調で言った。

「私はNY市警のピーター警視の姪です。ですから捜査の事も普通の人よりは少しは分かっているつもりです。それに私はマックス探偵事務所の単なる事務員でなく、わ、わたしは……私は、今は事務員ですが、将来的にはマックスさんと、いっ……一緒に事件を解決してゆくつもりでココに居ます!」と。


 そんな気持ちで居てくれたなんて思ってもいなかった。

 とても嬉しく思うだけでなく、今回の事件でも分かるようにレベッカの持つ能力が加われば鬼に金棒だ。

 だけど俺には、このような危ない仕事に大切なレベッカを関わらせることに、やはり抵抗があった。

 レベッカをココで死んだヤツのような目に合わせるわけにはいかない。

 いや、レベッカに傷ひとつ負わせたくないし、レベッカに怖い思いもさせたくはない。

 しかしレベッカの決意を無視するわけにもいかない。

 彼女はもう子供じゃないし、俺が思っている以上に大人であり、しかも確りしている。


 “ど、どうする?”

 “ここは、男として誠意を見せるべきところだ!”


 “でも、レベッカの安全は、どうなる?”

 “そこも踏まえて受けてやることが出来るかどうかで、男としての価値が決まるんじゃないのか⁉”


 “俺に出来る?”

 “出来るさ。俺は一人じゃない!”


 俺の心の中での葛藤していた。

 だがその終止符は俺自身が付けた。

 俺は最高にカッコいい男、マックス・ベルなのだから。


「よし、わかった。でも俺の指示には従って、勝手な行動をしないこと。いいな」

了解ラジャー‼」

 俺を元気づかせるためか、レベッカは飛び切りの笑顔を見せて言ってくれた。

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― 新着の感想 ―
素晴らしき相棒ですね!! (^_-)-☆
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