表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/58

【ピザ屋で……(At the pizza place...)】

「麻薬か……」

 俺の言葉に、ピーターの顔が曇る。

 可愛い姪っ子が見つけ出した、事件の核心に迫るかも知れない情報に安易に喜べないのはおそらくFBIの絡みがあるのだろう。

 たしか前に聞いた話では、麻薬密売に関わる捜査には既にFBIが乗り出していて、その件に関してNY市警に首を突っ込むなと釘を刺してきているらしい。


「ところで、グレッグ・メロンのアパートの家宅捜査はどうっだった?」

 麻薬で思い出したのは、失踪したグレッグ・メロンのこと。

 俺が勝手にヤツの部屋に侵入したとき、あの部屋には大量の合成麻薬があったのだから、今更FBIを気にして顔を渋らせるのは変だと思って聞いた。


「やつの部屋? ああ、家宅捜査はしたが、今のところ事件に関わるようなモノは見つかっていないが……まさか、勝手に入ったのか⁉」

 ピーターに聞かれ、俺はポケットからヤツの部屋から拝借した合成麻薬の箱を取り出して見せた。


「お、おまえ不法侵入だぞ‼」

 ピーターは箱を見るなり驚いて、いつになく難しい顔で俺を睨んだ。

 俺が未だ刑事だったなら、捜査令状も無しに被疑者の部屋に入る行為は証拠の捏造ともとられ、重大な違反となる。

 だが今の俺は一般人だから、もし侵入した行為がバレたとしても、ただの住居不正侵入で住む。

 ただ俺は、その証拠も現場には残していない。


「これは拾ったものだから、警察に届ける。 いつどこで拾ったのかは、この前徹夜で酒を呑む前のことなので忘れてしまった。法的にアウトな物だろうけど落とし主も困っているだろうから早く見つけてやってくれ。それと、仮に落とし主が現れて1割分くれると言っても俺には必要ないので辞退する」

「試したのか?」

「いや、俺は吸わない。身の丈に合わないことはしない性質でね」

 ピーターは「拾ったものは仕方がないな」と言い、箱を鑑識に渡し調べるように言った。


 ピーターと別れ、レベッカと共に未だ慌ただしさの残る現場を後にする。

 車に乗り込みエンジンをかけたとき、折角近くに来たのだから夜のビッグダックでも見に行くかとレベッカに聞くと、彼女は少しはにかんだような笑顔を見せて首を横に振った。

 時刻はもう6時。

 昼飯も食わずにいたので、腹が減った。

 今日の主役に、何か食べて帰るかと聞いたところ、彼女はピザが好いと子供のように目を丸くして明るく言った。


 ピザ屋は沢山あるが、どうせレベッカに食べさせるなら飛びっきり美味くて、しかも彼女の驚く顔が見てみたいと思い59号線をエルムハーストパークで降り、ブルックリンにあるピザ屋 “RobertasPizzaロベルタス・ピザ” に向かった。


 ブルックリン地区は、治安が悪い地域もあるが、その辺りは10年ほど刑事をやっていたからレベッカを連れてワザワザそんな場所に足を踏み入れることはない。

 車をブルックリン区の中央付近に位置するムーア通りに向けると、外壁に落書きのようなペイントだらけの建物が現れる。

 その様子は、荒れていた昔のハーレムのよう。


 建物の前で車を止めて俺が降りようとすると、レベッカが言った。

「なにか事件に関わる捜査ですか?」と。

 俺は違うと答え、ここがそのピザ屋だと言うと、彼女は少し緊張した表情を見せた。

 怖いのかと聞くと、レベッカはマックスと一緒だから大丈夫と言って明るく笑ったが、緊張のためかその笑顔は少し引きつっているようにも見えた。

 車を降りて店の中に向かう。

 レベッカの細い腕が、まるでお化け屋敷に入るカップルのように俺の腕を確りと掴む。


 落書きだらけの外壁の隙間から店の中に入ると、そこには幾つかの赤いパラソルの花が咲いた開放的なガーデン席が俺たちを出迎えてくれ、レベッカは「Waw!」っと目をキラキラさせて俺の顔を見上げて満面の笑みを向けてくれた。

 彼女の笑顔を見て “俺は、この笑顔が見たくてレベッカをココに連れて来たのだ” と思った。


 レベッカはピザにもご満悦だった。

 ここは味で評判の店だから間違いはない

 食後に小さな傘の挿してあるジュースを飲みながらレベッカが俺に聞いた。 ピザ屋さんなんて幾らでもあるのに、なんでコノ店に自分を連れて来たのかと。

 俺は答えた。

「店も人間も見かけに騙されてはいけない」と。

 答えを聞いたレベッカが、また俺に聞いた。

「ダイアナさん、やはり誘拐犯とグルなんでしょうか?」と。

 レベッカはダイアナについて何か誤解をしているようだったので、俺は彼女が悪い女じゃないことと誘拐の偽装についても誰かに騙されているか脅されているだけだと言う事を伝えた。

 レベッカは俺の言葉を聞いて自らの間違った解釈に驚いたのか、一瞬間を置いた後に慌てて「き、屹度、そうですよね」と言って照れ隠しのためなのか無理やり作った笑顔を俺に見せたことが少し気になった。


「レベッカ、少し頼みがあるんだが」

「なに? いいよ」

 レベッカは未だ用件も言っていないうちからOKしてくれた。

 俺は携帯に取り込んでいた事件で死んだ女、パウラ・フェルナンデスの写真を見せて、細身に加工してくれないかと頼んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
PC、ネット環境が不調で不義理になってしまい申し訳ございません<(_ _)> “RobertasPizza!行ってみたいですがマックスさんいないし無理ですね(*_*;
 レベッカちゃん、折角のマックスとのおデートだったのに、何故か複雑そう。  パウラ・フェルナンデス❔  こんな人、登場してましたっけね❔  すみません、記憶力が死ぬぼどポンコツで。(T.T)  ピータ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ