【俺がやらなきゃ誰がやる?①(If I don't do it, who will?)】
“最高にダサい男”私立探偵マックス・ベル
は、
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結局リズの店でジムビームのコーラ割りを2杯飲んで店を出た。
安い酒をたった2杯飲むだけで、料理や酒のつまみも注文しない俺に会員カードをくれて、休憩だと言ってタダで俺の相手をしてくれるリズ。
コレは、かなり脈がある。 と言うより、彼女は俺にゾッコン惚れているのかも知れない。
そうでなければ……帰り際に店を出る時、また出入り口の用心棒2人に睨まれた。
リズは良い女だけど、この店自体は良い店ではない。
会員制で、客は金持ちが多いみたいだが、どうも怪しい雰囲気がムンムン漂う。
バーの中で客同士が何やら商売の話をしている様子も見聞きしたし、奥にあるVIPルームらしき所にも用心棒らしい東洋人の男が立っていた。
これはひょっとするとチャイニーズマフィアと関係があるのではないだろうか。
もしそうならピーターに知らせないと……いや、マフィアの捜査はFBIの管轄だし、俺の勘が当たっているとなると、いくらパートだからといってもリズも只では済まないはず。
仮にFBIが捜査に乗り出して犯罪に関する何の証拠も掴めなかったとしても、そもそもコノ店は飲食店の禁煙と言うNYの条例を破って営業している。
ピーターには悪いが、ダイアナの潔白を証明する捜査は少し遅れるが、この店の正体を調べてもし俺が思う通りチャイニーズマフィアと係わりがあるのなら早めにリズを辞めさせなければいけない。
今は客を手玉に取って上手くやっているらしいが、あれだけの美人だから客だっていつまでもおとなしくお預けを守ってくれるはずもない。
そのうち断り切れない状況だけでなく、強制的な何かが起こってしまう可能性だってある。
おそらくその日はそう遠くないはず。
チャイナマフィアの悪事を暴くカギは、VIPルームで何が行われているかを確かめれば分かるだろう。
もしもアノ店が本当にヤバい店であれば相当な危険を伴うが、誰かがやらなければ暴くことはできない。
そしてその誰かを待っていたのでは、リズは救えない。
やるのは俺だ!
“俺がやらなきゃ、誰がやる‼”
俺はアパートに戻って作戦を考えることにした。
真っ先に思いついたのは、店の入り口に居るあのイケ好かねえ用心棒をぶっ倒して、代わりの用心棒となる作戦。
名付けて “道場破り作戦”
アイツ等のカンフーの腕前がどのくらいのモノなのかは定かではないが、狭い店の玄関ではクルクルと回って蹴りや裏拳を繰り出すよりも俺の鉄拳の方が早くヒットする。
しかも一発で相手を倒す威力は、刑事時代に保証済みって訳だ。
2人の用心棒を俺一人で倒したのだから、奴等も放っておくはずもない。
早速俺の腕を見込んだ店長が、VIPルームに居るはずの親玉の所に報告に行く。
そして俺はその親玉に呼ばれてVIPルームに入り、新しい用心棒として雇われる。
用心棒として店の玄関に立っていれば、どんな奴らが週にどの程度訪れるかが分かり、ドアマンとしてのサービスも付け加えてチョクチョク中の様子を窺っていれば中に入った客の誰がVIPルームに入っているのかもわかる。
おーっ! 我ながら、今夜は冴えている!
よし、この作戦で行こう!
作戦が決まった俺は浮気調査の仕事ばかりでスッカリ鈍ってしまった体をリフレッシュするため、久し振りにクローゼットから通販で買ったサンドバッグを引っ張り出して一通りトレーニングしてからベッドに入って眠り、朝は久し振りに早起きをしてセントラルパークを1周してから戻った。
アパートの玄関にあるポストから新聞を取ろうとした手が空振りに終わり、立ち止まって振り向くと自分のポストに取るべきはずの新聞が入っていないことに気がついた。
“またバイトの配達員が変わったのか?”