【謎①(Mystery)】
“最高にダサい男”私立探偵マックス・ベル
は、
毎週、月金のAM6時00分よりお届けいたします(๑╹◡<๑):.。+゜
グレッグ・メロン。
これがミランダから渡されたジルバラードの持ち主の名前。
違反歴はスピード違反に飲酒運転、駐車禁止に信号無視とバラエティーに富んでいる。
自分勝手な運転をする、言ってみれば運転不適合者だ。
他には年齢や住所が書かれているだけで、身長の記載とかはないのでコイツが背の高いほうか低いほうなのかは分からない。
まあそのようなことは、いずれ直ぐに分かる。
問題は幾つもあるが、その中でも妙なのはアンドリューの車の中にあったパソコンが何故車の中ではなく自宅に戻っていたのかだ。
ピーターの口調ではパソコンの内部データーに左程事件にかかわる重要な情報が得られなかったことと、第三者による改ざんを疑われる証拠も残ってはいない様子だったが、犯人がアンドリューのノートパソコンを盗み出して自宅に届けたことは今のところ俺と犯人のみが知る事実。
パソコン内のデーターを見たとすれば、最後にアクセスした日付と時間の履歴が残る。
履歴が残れば、それは既にアンドリューが死んだ後の時間となるのだから警察も不振に思って調べるだろう。
ピーターがその事を俺に隠しているのか、それとも本当に履歴が残っていないのか……。
履歴が残っていないと言う事は、パソコン内のデーターは何も見ていないばかりか電源すら入れていない事になる。
もしそれが事実であれば、犯人は何のためにアンドリューのパソコンを盗んで自宅に置いたのだろう?
しかし何かがおかしい。
俺が盗み取ったデーターでは、アンドリューはチャイナマフィアと関わっている。
無法者のチャイナマフィアとの係わりが分かれば、警察も一概に自殺とは思わず、先ずはチャイナマフィアの関与を徹底的に疑ってかかるはず。
なのにピーターは、大方の見方は自殺だと言った。
何故だ⁉
色々と思案を巡らせていたが、いくら考えても先には進めなくなり珈琲を煎れにキッチンに向かおうと席を立ったときにズボンのポケットから財布が落ち、折り畳み式の財布に挟んだままでいたシルバーのカードが飛び出していた。
リズにコートを返しに行ったとき、帰り際に彼女がくれた店(hideout隠れ家)の会員カード。
どうせ考えていても答えが出ないのなら、気晴らしに美女を眺めながら酒でも飲もうと思い店に行く。
入り口には、またあのデコボココンビの用心棒が怖い顔をして睨みつけてきたが、会員証を見せる。
そう言えば俺のあとにアンドリューの車を荒らしに来た2人組も、この2人と似たような背格好。
だが2人はグレッグ・メロンとは似ても似つかない東洋人。
どちらかと言えば、アンドリューの事件のもうひとつありえるチャイナマフィアの関与説のほう。
もしそうだとすれば、この2人がアンドリューの車からパソコンを……と、言うことはアンドリューの妻であるダイアナとも顔見知りなのだろうか?
俺があまりジロジロと2人を見るものだから、2人も俺を睨みつけているのに気がついたので、ガードマンが居る店には慣れていないものでと頭を掻いて誤魔化した。
背の低いほうがドアを開けると、ドアの隙間から煙草の煙と古い音楽が流れてきた。
曲はアート・ブレイキーズのMoanin'(呻き)
俺の今の状況にピッタリはまる曲だ。




