【アンドリューのノートパソコン②(Andrew's laptop)】
“最高にダサい男”私立探偵マックス・ベル
は、
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「ところでパソコンの方は、どうなった?」
俺は死んだアンドリューの車にあったノートパソコンが、その後どうなったのか気になって聞くと、ピーターはまるで知らなかったように惚けた。
「ノートパソコンだよ。アンドリューの」
ピーターは、ようやく気がついたように、彼の書斎に置いてあったヤツかと、俺に言った。
“書斎に、置いてあった?”
「P社のタフなビジネスモデル?」
「そうだが、それが何か?」
「いや、データーに何か不審な点は見つからなかったかと思って……」
「特に今のところ不審な点は見つかっていない。……ああ、そう言えば奴さん、チャイナマフィアの面倒なことに巻き込まれていたみたいだな」
「そうか……」
たしかに死んだアンドリューはチャイナマフィアの面倒な事に巻き込まれていた形跡があったことは俺も確認しているが、車の中にあったものがいつの間にかヤツの家に戻っていると言う事は怪しい。
「データーが改ざんされているとか、消された形跡は?」
「科学捜査部がハードディスクを調べたが、特に今のところは何もないようだ」
何かが、おかしい。
俺のあとにヤツの車を狙った2人組は、ただ単に車からパソコンを盗み出してヤツの家に持ち帰っただけとはとても考えられない。
いや、もしかしたら自分たちに不利になるようなデーターが入っているかどうか確認しただけ?
それにしてもワザワザ家まで届けるか?
届けたとして、それはいつなのか?
ダイアナが警察に呼ばれた隙に家に忍び込んでノートパソコンを書斎に置いた?
それともダイアナが……いや、彼女に限ってそんな馬鹿なことはない。
ノートパソコンが今もダイアナの家の書斎に置いてあるのか尋ねると、ピーターは笑ってこう答えた「事件が解決するまで押収しておくのが当たり前のことだろう? そんなことも忘れたのか」と。
俺は忘れていたふりをして、その場を誤魔化した。
ニューヨーク市警を出た俺は、真直ぐ事務所に帰ってアンドリューのパソコンから抜き取ったデーターを調べた。
調べていると、今日交通課のミランダに調べてもらったアノ2人組が乗っていた車の持ち主の名前を見つけた。
ヤツの名前はグレッグ・メロン。
そいつが背の高いヤツなのか、低いヤツなのかは現時点では分からない。
席を立ち部屋の窓を開けて煙草に火をつけて吸った。
なんてこった。
こんなとき、もし俺がまだ刑事だったら色々と調べられたのに。
探偵なら気楽にやれるだろうと思っていたが、気楽にやれるのは浮気調査くらいなもの。
いざ事件に出くわすと、警察の権限を持たない立場ではまるで巷の噂話程度のゴシップを狙う週刊誌の記者みたいに薄っぺらじゃねえか。
俺は事件の核心に迫れないもどかしさを感じながら、街の灯りに照らされた空にボヤケて見え隠れする星を眺めていた。