表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

【摩天楼の女、リズ①(Liz, the Skyscraper)】

“最高にダサい男”私立探偵マックス・ベル


       は、


来週から毎週、月金のAM6時00分よりお届けいたします(๑╹◡<๑):.。+゜

挿絵(By みてみん)

 ピーターは立体駐車場に止めてあった死んだアンドリューの車のドアがバールのようなものでこじ開けられていた事と、その時に鳴るはずだったホーンの配線が何物かによって切られていた事を言い、俺に何か知らないかと聞いてきた。

 俺は苦笑いをしながら「知らない」と答えたが、ピーターは俺がピッキングでドアを開ける前にホーンの配線を切った事に気が付いているし、俺もピーターが当日の俺の行動の殆どを既に掌握していることを知っている。

 だから俺の答えた“知らない”は、“Yes”と同じことはお互いに知っていた。


 ピーターは遊びに来たのでもなければ、ホテルに居た偽刑事の正体を暴くために来たのでもなく、彼は俺に仕事を頼みに来たのだった。

 仕事とは、俺の依頼主でもあり先の事件で死んだダイアナ・スコットの身辺調査。

 探偵の仕事は法律に触れない範囲であれば警察にだってできる。 いや、警察の方が職業柄行使できる権限があるので、法律上一般人と何ら変わらない探偵よりもより詳しい情報が得られる筈。

 だから何故俺に? なんてことは思わなかった。

 仕事にありつければ、ソレでいい。

 しかもピーターに見込まれたのだから、俺も満更じゃない。

 そして彼女に掛った不当な疑いを、この俺が晴らしてやるのだ。と、意気込んでピーターが帰り、レベッカも家に帰ると言って事務所を出て行った。

 誰も居なくなったので俺も事務所を出ようとしたところ、車のキーが無い事に気付いた。

 俺はキーを探していたが見つからない、しばらく経って家に着いたレベッカから間違って車のキーを持って出てしまったと連絡が入る。

 彼女の家はハドソン川を越えた向こう、ニュージャージー州カーニーのアーリントンにあり、ここからは16マイル(約27.7㎞)も離れているから幾ら何でも持って来いとは言えずに明日大学に行く前に届けて欲しいとだけ言った。

 彼女は電話口で「では、お疲れのようですから今日はユックリ休んで下さい」と言って通話を切った。

 “確信犯か……”

 まあいい。

 無理して依頼人の所に行くにしても、もう日が落ちて夜が来る。

 暗い夜道を走っていて居眠り運転をして事故でも起こせば、彼女に掛けられた疑いを晴らすどころじゃなくなってしまう。

 まあ、今夜は徹夜だったし、ユックリするか……。


 hideout(隠れ家)

 これが俺にコートを貸してくれた、あの背の高い美貌の女から渡させた名刺に書いてあった店の名前。

 俺は名刺に書かれた店の名前と住所を辿って店に向かった。

 NY52番街の人通りの少ない目立たない場所に店はあった。

 本来ならあるはずの店の場所を知らせる看板もない上に、夜だというのに光るイミテーションもなく煌めく様々な看板で溢れたタイムズスクエアに比べるとまるで時代を間違えてきたような感じさえする。

 木の一枚板で出来ている入り口のドアには小さな文字でhideoutと書かれてあるだけで、営業中かどうかを示すOPENやCLOSEの札さえも掛かっていない。

 ドアから直接中の様子を伺い知ることは出来ないばかりか、防音機能付きなのか耳を当てても物音さえ聞こえてこない。

 まるで客を寄せ付けないような、不思議な造り。

 店の名前であるhideoutは隠れ家という意味。

 もし心配性な客なら、このドアを開けて中に入ると、怖いお兄さんたちが待ち構えていて身ぐるみ剥がされてしまうかも知れないという不安に襲われるだろうし、ノー天気な客ならそのスリルに特別な興奮を覚えるのかも知れない。

 俺はごく普通の人間らしく不安を覚えつつも、店の中に居るはずのリズに再開できる期待にワクワクしながらドアを開けて中に入った。


 ドアにはやはり防音加工がされていた。

 中にはもう一つの扉があり、その扉の前には背の低い体格のいい男と背の高いやせ型の男が居て俺を睨んで「何者だ?会員証を見せろ」と言った。

 どうやら2人は店の用心棒らしく、そしてココは会員制のバーらしかった。

 俺は借りていたコートを届けに来た事を言い、リズからもらった名刺を見せると、背の低い男が名刺を持って中に入って行った。

 ドアが開いたとき中から煙草の煙が漏れてきた。

 中に入って行った男は直ぐに出て来て、入ってもいいと俺を睨みつけて言った。

 感じの悪いヤツ。


 店の中は暗く、1920年から1933年にかけて施行された禁酒法時代を思わせるようなクラシックで落ち着いた雰囲気。

 流れている曲も、ビリー・ホリデーやルイ・アームストロング、ペギー・リー、ビング・クロスビー、フランク・シナトラと言ったクラシックな曲が流れ店の雰囲気を魅力的なものにしていた。

 客はまばらで、煙草の煙が漂っていた。

 ニューヨークはもう20年も前に、全ての飲食店が禁煙になったはずで、その全ての中にはこのようなバーも含まれている。

 まるで禁酒法時代にコッソリと開かれていたバーの、禁煙バージョン。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 イラストのLizさん、セクシー❗❗ヾ(≧∀≦*)ノ〃  知らないでYes、が暗黙の了解で解り合ってるのはなんかカッコいいですね。  hideout、間違えてヒデあうとってよんでしまいました。笑  頭…
最近日本でも禁煙店が増えてきて、喫煙者が肩身が狭いとぼやいたりしていますが、ニューヨークもそんなところがあるのですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ