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『シーナⅡ(Sheena II)』  作者: 湖灯


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21/63

【札幌への強行軍①(rush this road to Sapporo)】

「お待たせしました」

 ドアをノックして入って来たのはシーナ。

 特に衣服に目立った乱れはなく、戦ってきた雰囲気は微塵もない。

「コーネリアは?」

「いま、車のチェックをしています」

 シーナの返事で、やはり忌々しき事態があったことを改めて確認した。

「行くぞ!」

 神宮寺に合図をして、皆の準備が出来ていることを確認して廊下に出て驚いた。

 廊下の一ヶ所にプロテクターに身を包んだ男たちが10人も、まるで疲れ果てて眠っているように重なり合っていた。

 普通の格闘戦では在り得ない密集した状況に、いったい何が起こったのか戸惑う。

「大砲でも撃ったのか?」と言う神宮寺の言葉が全てを表していた。

 機銃掃射を受けたって、少しは逃げる余裕はあるはず……。

 その先に進みロビーに出たとき、私を含め一同が目の前に広がる光景に足を止めた。

 家具やソファーが壊れ、そこら中に散らばり、ロビーに居た30人以上の人たちがその間を埋めるように倒れていた。

 その中には受付嬢も含まれていた。

 まるで竜巻にでも襲われた後のよう。


「いったい何があったんだ?」

「特殊部隊1個小隊に襲われたとしても、こんな短時間でこのようにはならないはず」

「自然災害か??」

「まさか……」

 神宮寺の部下たちが口々に言っていた通り、それは凄まじい惨状だった。

 ロビーを抜けて外に出ると、何事もなかったようにコーネリアが車のチェックを終えて運転席にいた。

「直ぐに敵の仲間が来るわ。早く乗って!」

 言われるまま私たちは車に乗り込んだ。

 私は前部シートの真ん中に座り、シーナが運転席の反対側の窓際に座った。

「いったい、何をした?」

 他のメンバーに聞こえないように、ビアンキがコーネリアに聞くと、彼女は「私は何もしていない」とだけ答えた。

 つまりアノ惨状は、シーナ一人の仕業と言うことか……。

 改めてジョージ・クラウチ博士の作ったロボットの恐ろしさを目の当たりにして、その張本人であるシーナを見ると、彼女は何事もなかったように目を瞑って寝ていた。

 車は一旦街を出て常磐高速道路に乗り、ロボット工学の分野で日本をリードしている茨城の大学を目指すことにした。


 

 どうせ今日の事にはならないので、途中のサービスエリアの充電スタンドの隣に車を止めて、遅い夕食を取る。

「シーナさんは、いいのか?」

 神宮寺が眠ったままのシーナを心配して声を掛けてくれた。

 コーネリアが揺り起こそうとするが、シーナはビクともしないで眠ったまま起きない。

「慣れない飛行機の長旅で疲れているんでしょう。帰りにお弁当でも買って帰りましょう」

 コーネリアがそう言ってシーナの傍を離れる。

 シーナが眠っているのは、さっき暴れてエネルギーを消耗し過ぎてしまったから。

 車の発電容量は少なすぎるから自ら省電力モードで眠り、今はコーネリアが車を充電スタンドの隣に止めた事でERB(受電バッテリー)に急速充電を行っているに違いない。

 だが、そのことをマダ得体の知れない神宮寺たちに説明することは出来ない。

「ところで、アノ雑居ビルの監視カメラはどうしたの?」と、潜入捜査が専門の水無月が聞いた。

 コーネリアが「全てデリート済みです」と答え、情報担当の田中が「さすがだな」と言った。


 サービスエリアの食堂で夕食を食べながら作戦会議を開いたとき、水無月がどうしてアジトが敵にバレていたのか聞いてきた。

 システム担当の田中がセキュリティーは最高だったのにと、不思議がった。

 たしかに田中の言う通りだが、おそらく敵は我々がアジトを別に設けるにあたって、何を先ず優先するのかを考えたうえで、そういった条件にマッチした場所を何カ所か先に抑えていたのだろう。

「つまり後手に回ったと言うことだな」

 神宮寺がそう言うと、甲斐が「チッ」と口を鳴らした。

「ところで、雑居ビルに居た敵は誰が倒したの!?」

 水無月が興味津々と言った様子で聞いてきた。

 まだシーナの素性を明かすことの出来ない私たちは、デルタフォースだと答えた。

 水無月は、「君たちはデカいもんね」と何も疑問に思わずに頷いた。

 デルタフォースに限らずアメリカの特殊部隊の選抜隊員による1個小隊なら、あの程度の技は不可能じゃないが、ロボットのシーナがそれを一人でやってしまった事を思うと新たに秘密にしておかなければならない重要な物件を背負う責任感で身が押しつぶされそうな気持になった。


 作戦会議の終了間近に神宮寺の携帯に1通の情報が入った。

 伝手つてのある公安警察からの情報。

 それによるとロボット工学の若手のホープと呼ばれる、奈良下准教授が長期休暇を取ったまま休暇の期限が切れても戻って来ていないと言う情報だった。

 奈良下は、これから向かうはずの大学に在籍しているはず。

「その奈良下准教授の写真を何枚か入手できますか?」

 コーネリアが、真っ先にその情報に食いついた。

 たしかにロボット工学の研究者の失踪は、見過ごせない情報。

 しかしその研究者の写真を急いで取る必要は、今の私たちの状況では少し考えにくい。

 どちらかと言えば、公安や県警などに捜査を依頼して他にも有益な情報が無いかとか、態勢を立て直す方が先のような気がしていた。

 情報提供者の公安警察からは、直ぐに何枚かの奈良下准教授の写真が届いた。

 コーネリアはその写真を入手すると、誰かに写真を転送していた。

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― 新着の感想 ―
コーネリアさんには考えがあるのですね(^_-)-☆
[一言]  ああ、やっぱりそれだけの活躍をするとエネルギーが足りなくなっちゃうんですね。  と、言うことはシーナちゃんはコーネリアさんの居ない場所に一人で行かせる事ができないって事なのでしょうか。  …
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