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第8話 泉の森ダンジョン2

 ダンジョン探索は続く。

 森、森、森と変化のない景色とは異なり、魔物は第九階層に踏み入ると大きく姿を変じた。六階から八階まで牙ザル、角ザル、爪ザル、大ザルとラインナップは豊富だったのだが……。


「ウグォオオオオオ!!」


 九階層のサルは牙角爪が混ざり筋肉圧縮した通常サイズのマッスルザルへと超進化を遂げていた。ちなみに今のはスケダの雄叫びである。


「ヴッギギー!!!」


 とはいえ、サルはサル。どこまで行っても10階層型ダンジョンのサルでしかない。


「――必滅、連打百式」


 そんなスキルは持っていないが、相手の隙を突いた掌打の連撃はマッスルザルの肉体を打ちのめし筋肉を破壊し、魔力の欠片へと還していく。


 一匹、二匹、五匹、十匹、百匹。

 数え切れないほどのサルを殴り殺し、泉の森ダンジョン第九階層を突破する。特にボスはおらず、レベル10の「武闘家」一本で潜り抜けることができた。途中数度受けたダメージは「癒術士」で回復しているため、やはり回復役は必須かもしれない。もしくは回復薬のようなアイテム。


「ふぅ」


 本日九回目となる大木の洞を発見した。

 今までと異なり強烈な魔力を放つ階段だ。階段付近には何かを感じ取っているのか魔物も寄り付かず、ダンジョン内には動物もいないため妙な静けさに満ちている。


 収納魔法より取り出した軽食と水で補給をし、時間を確認する。腹の具合的に十五時間といったところか。

 ぶっ続けで動いているとはいえ、よくも一切眠らず持つなと自身の肉体に感心する。ダイスケも「職業の力ってスゲー!」と言っている。


「――行くぜ」


 自身を鼓舞し、高鳴る心臓に口元は笑みのまま階段を下りていく。体感一秒。踏み入れた次の瞬間には別の景色が見えていた。背後は大木の洞。


「――」


 泉の森ダンジョン、第十階層。

 中央に小さな泉を湛え、周囲を隙間なく木々に囲われた広場。一種のバトルフィールドであり、上空にはどこから伸びているのか太い木の枝が張り巡らされている。


 そして正面。泉の前に陣取り、今まさに立ち上がった巨躯の魔物。


「ハッ、最後の最後までサル野郎かよ!」


 嘲笑い、しかし相手から目を逸らさずに戦意を高める。

 既に「魔法使い」で小型魔法剣を用意し、職業も「剣士」にしてある。振り返った巨ザルはスケダの二倍以上に大きく、また上階のサルと異なり得物を持っていた。太く大きく頑丈な棍棒だ。


「ヴギギギギーーー!!!」

「ウゥゴオオオオオオオオオ!!!!」


 挨拶代わりの猿叫には絶叫を返し、男は駆け出す。


「サルは絶滅だあああああ!!!」


 叫び、突貫!!

 一丁前に身構えるボスザルを見て。


「ハッハァ!!」


 スケダは笑った。同時、「魔法使い」レベル10で覚えた魔法を使う。


「魔力圧縮ッ! ブレイズアロォォオ!!」


 先手必勝に最大火力の魔法をぶち込んだ。

 現状最強の火魔法だ。まさかの遠距離攻撃に慌てたボスザルは避けようとして飛び跳ね、しかし追尾する火焔の矢にぶち当たる。


「ヴギギギギィィー!!?」


 大!爆!炎!

 燃え盛る火柱は頭上の枝を燃やし尽くし、延焼しながら火の粉を散らす。


「はははは! サルは黒焦げだぜーー!!」


 思いっきり笑いながら、スケダは油断せず次の動きへシフトする。

 職業は「盗賊」。このために先の魔法剣は小型にしておいたのだ。気配を消し、音を消し、魔力を隠して地を這うように駆ける。薄れる火柱に隠れるように走り、熱を我慢し時を待つ。額を伝う汗がぽたりと顎から垂れたその時!


「ヴッギギギギィィ!!!」


 ぎりぎり燃え尽きなかった枝に掴まっていたのか、全身の毛を燃やしながらもボスザルが降りてきた。期は満ちた。


「――眠れ、永遠に……」

「ヴギィィィィ!?!?!?」


 「盗賊」レベル10にて獲得したスキル「無音殺術」により、ボスザルの眼球へ魔法剣(小)を突き刺した。瞬間的に「武闘家」となり、最速で剣の柄へ掌打を入れながら勢いで飛び跳ねボスザルから離れる。これぞスケダ愛用人力パイルバンカー。


 悲鳴を上げるボスザルへ、「魔術師」になったスケダの追撃が迫る。魔法剣は深く突き刺さり、ちょうどボスザルの剛腕によって引き抜かれようとしているところだった。


「残念だけど少し遅いぜ!!」


 魔法剣の先端内部に仕込んだ魔術を起動。

 剣身に含まれた魔力が凝固し、銃を撃つ要領で発射される。前世知識の大盤振る舞いだ。脳内ダイスケも「うおおお!! チートチート! チート最強!!」と狂喜乱舞している。

 この魔術一つで魔力はすっからかんになるほどリスキーではあったが。


「――――あばよ。次はサル以外に生まれ変わるんだな」

「ヴギギ……ギィィ……」


 倒れ、燐光を散らし消えていくボスザル。

 マントのない一般シャツを翻した風に見せかけ、さらりとカッコよくダンジョンボスへと背を向ける。


「……」


 結果だけ見れば完封勝利だ。

 棍棒は使わせず、初手の大魔法と後の銃撃魔法剣ですべて済ませた。今回に限って「剣士」はほとんど使わなかった。最速最大効率を極めた結果、やはり魔法や魔術が大活躍した。ダンジョン攻略において後衛が大事にされるというのも納得のいく話だ。


「……くくく」


 次第に実感が湧いてくる。ボスドロップに目を向けず、現れたゲートも気にせずスケダは笑みを深める。


「ははははは!! オレがダンジョン攻略者だああああああああ!!!!! うおおおっしゃああああああ!!」


 衝動のままに咆哮し、気持ちを吐き出す。

 ようやくだ。苦節十年。『無職がダンジョン攻略なんてできるわけねえだろ』という言葉を覆すことにようやく、ようやく成功した。


「ばーかばーか! 馬鹿野郎お前!オレはダンジョン攻略者になったぜばああああか!!!! ははははは!!!! なーにが攻略できねえだばか!オレは攻略したぜ一人でよお!! ソロだソロ! ソロ舐めんな!! 無職舐めんな!!!」


 天地に叫び、森に叫び、心の底の鬱憤をすべて吐き出し拳を振り上げる。


「っしゃあああ!!!」


 勝利を噛み締め、叫び叫び叫び、喉が痛くなるまで叫んだ後に水を飲んでへへへへと笑う。

 余韻に浸っていてもダンジョンは崩れていくため、やれやれと首を振って。


「――しょうがねえダンジョンだ。オレを待たねえとはな。やれやれだぜ」


 肩をすくめながら調子に乗った顔全開でボスドロップを拾いゲートに入る。

 ダンジョンを出る直前、スケダは思った。


 そういえばこのダンジョン、サルの群れを突破するのに必死で魔物のドロップ一切拾えてなかったな、と。

 


【第10階層型泉の森ダンジョン 完全攻略完了】

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

スケダ

種族:普人族

職業:無職(剣士)

職業レベル:10

体力 :0F

知力 :0F

思考力:0E

行動力:0F

運動力:0F

能力 :0F

 

【選択可能職業】

剣士10、魔法使い10、武闘家10、癒術士10、魔術師10、盗賊10、戦士10

 

【転職可能職業】

剣術士or魔法剣士、普魔法使い、武士or武僧、癒者、普魔術師、盗者or盗剣士or盗術師、強戦士

 

――――――――――――――――――――――――――――― 

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