目覚めと名前
「うーん……」
と目を開ける。まだ視界がぼんやりしていてよく見えない。
「——————!」
何か聞こえる。誰かの声だろうか。
「大丈夫ですか?わかりますか?」
だんだんはっきりしてきた。何が大丈夫で、何がわかるのか、あるいはわからないのかわからないが、とりあえずこくんと頷いた。
「よかった〜。テオ様〜!この子が目を覚ましました〜!」
声の主はトテトテと足音を立てて部屋から出て行ってしまった。どうしていいかわからないし、このまま横になっていよう。お部屋の中をふよふよと浮いている光が見えるけど、何だろう。気になるなー。まだぼんやりしているのかな?
なんて考えながらしばらくすると、足音が二つ近づいてきた。
「目が覚めたかな?」
部屋に入ってきた男性が言った。これにも頷いて返す。
「よかったわ〜。三日も目を覚まさなかったんだから〜」
その隣の女性が言う。三日か。とても長く眠ってしまっていたみたいだ。ここはどこ?と聞いたり、ありがとうと言ったりしたかったけど、その前に、
「君の名前は?」
と聞かれてしまった。僕の名前?あれ?わからないや。なんでだろう。答えることができずお互いに困っていると、
「アルス。貴方の名前はアルスです。」
と、三つ目の声がした。声の主を探してキョロキョロして見たけど、見えるのは二人の顔と、相変わらずふよふよ浮いている光だけ。だとしたら、きっと声の主はふよふよだ。
「ふよふよ?」
と思わず声に出してしまった。
「ん?フヨフヨと言うのかい?」
違う違う。
「んーん!アルス!」
全力で否定し、ふよふよから教えてもらった名前を言う。本当の名前かはわからないけれど、それしか知らないのだからしょうがない。
「そうか。アルスというのか。良い名前だな。私はテオ。テオ・スリジエだ。今は疲れているだろうから、ゆっくり休みたまえ」
と男性が言うと、女性が
「私はテオの妻のシアよ。アルスくんお腹が空いたでしょう?今消化にいいご飯を持ってきますからね」
といい、二人は部屋から出て行った。
残されたのは僕と……
「ふよふよ?」
そう、よくわからないふよふよの光だ。