火曜日.1
「おはよう!いい朝だね!」
火曜日は君の明るい声と爽やかな笑顔で目が醒めた。
クラスで人気者の君に起こされるなんて僕はクラスメイトに怒られそう。
「……て!なんで僕の居場所分かるの!?」
「孤児院の院長がね、家へ来たの」
「……え?」
寝惚けていた頭が、段々とすっきりしてきたけど、ベッドの上から降りてくれないかな?
しかし、はっきり言うだけが取り柄の院長がなんでアリアのとこに?
「あいつ、屑みたいな奴ね「口べらしが出来て最高だ、是非お礼がしたい」と言ってきたのよ!」
「………」
あの院長、わざわざあんなこと言ったのか?
それよりポニーテールのアリアも可愛いな。なんてぼんやり思ってると胸ぐらを捕まれてぐらぐらされた。
ぐわんぐわん揺れて、冒険に行けなさそうだ。
成り行きを見守っていた子供たちが慌てて止める。
「駄目だよ、じゃじゃ馬さん!ルナはそんなに頑丈じゃないぜ!すげーだろ!」
「ルナは、あのおかしな院長たちからいつも私達を庇ってくれたのよ!もっと優しくして!」
「あー、はいはい。ともかく私は頭来たから往復ビンタしたわ!当然でしょ?口べらしを引き取ってくれたお礼に私を娼館に売り飛ばして自分が儲けてやろう、何て言うのよ?私もだけどパパとママが怒ってグーパンよ!」
「……それはなんかうちの者がごめんなさい」
子供たちと一緒に心から詫びた。ホントになんであんなのが院長してるんだ?
「それで、その院長はどうなったの?」
「私のパパが憲兵呼んで連れて行ってもらったわ」
ふん、とちょっとムスッとしてるけど。
まあ、いい。アリアが無事なら。でも、どうしよう?院長がいないならこの孤児院のことは……。
僕の不安に気づいたのかアリアはにこっと笑うと安心させるように笑う。
「大丈夫、大丈夫。パパがここの院のことは面倒見るって」
「え?アリアのパパって」
アリアのお父さんて、授業参観で見たことあるけどがっしりした感じの強面だったような……。
「とと、そんなことより早く出発しなきゃ、ルナが危ないよ?」
「へ?」
「パパが、ルナには是非ともよろしく言いたいって行ってたから、あはは~!」
「あはは、じゃない!」
早くしないと僕は八つ裂きされてしまうのでは!?
大事な一人娘と二人旅なんて普通に親御さんなら怒るよね!?
僕は着替えると荷物を持ってアリアの手を引く。
明るい炎のように赤い髪に透き通るような水色の瞳。
背は低いけどスタイル抜群。そんな君と朝から二人きり。野ウサギがからかうようにこちらを見上げてる。二人きりなんだよな。
君は、鼻唄を歌いながらごお昼ご飯を作ってる。
この薫りは僕の好きなコーヒー。
薫りとは裏腹に苦い大人の味。砂糖とミルクはまだまだ手放せないけど今は贅沢行ってられない。
いつも寡黙なお父さんが飲んでいたのを格好いいなって眺めてたけどお母さんは、寡黙な人は物足りないわねって冗談交じりに呟いてたな。いや、お父さんがかわいそうだよ!?
火曜日は みんなが元気になれる そんな日
それは 月曜日の憂鬱を乗り切った神様が
心に火を灯すから みんなやる気
路地裏のホームレスだって
じっとしてない
もこもこ羊たちはとっくにいなくなっていて、その代わり君の鼻唄に小鳥やキツネたちが小躍りしていた。
君はなんでも出来るから
僕は惨めになる時もある
外でも まるで気にせず
お家にいるみたいに
分かってるよ そんなの気にしても仕方ないって
僕と君は違う 違うんだ
「ん~?どしたの、テンション低いよ?あ、いつもか~。クラスでも静かだからね~。でも私は静かな人はいいと思うよ?」
「それは、フォローになってるのかなアリア」
「私的にはなってるからよし!それに、こんな美少女と朝食を食べてるのだよ?もっとありがたみを噛みしめるべきだと思うな~?」
「いや、自分で言う?」
思わず吹き出してしまいそうになる。
君のサンドウィッチの中身を出してしまわなくて良かった。
「フフ。少し笑ったね。ほらほらお月様を返しに行くんでしょ~?ルナ、ご飯はちゃんと食べて元気に行こ?」
「あ、はい。そうする」
「固い固い。家の頑固親父みたいだね!」
火曜日は 明るい元気な日
みんな カッカ カッカして
熱が宿ってるから元気に
仕事や学校に行くんだよ
僕と君の旅も 明るさに
街道を行くんだ
夜空にお月様がなくて
みんな落ち込んでいるけど
火曜日は みんな元気
猛る炎のように 太陽が
みんなに元気を与えてくれる
だから僕も君と刻む足音は楽しい音へと変える
さあ お月様を返しに行こう
みんなどうしてるかな。先ほどのことを思い出す。
街の門でみんなに見送られるも、アリアの父親には遭遇し睨まれ、クラスメイトの男子たちからは嫉妬に睨まれ、ゴンザレスには……いや、ゴンザレスはセクシーヌ先生に首ったけになってしまったので特にスルーだ。
正直、ゴンザレスは乱暴者だから離れられてホッとはしてるけどね。
「みんなー!行ってきますー!私がいないからって泣くなよー!」
「「「泣かないわ!」」」
女子の総ツッコミ。しかし、ユッコは違った。何故か興奮したように僕たちを眺めている。
「ああ、カースト底辺のぼっちと……はぁはぁ……カーストトップとの格差恋愛……ふぅふぅ。たんのしみぃ~」
「お、おい!ユッコが興奮し過ぎて倒れそうだぞ!?」
「助けて上げないと!」
「僕が行くよ!興奮するユッコは僕のものだ!」
「「「おおー!よく行ったヌテルン!」」」
なんか、僕たちの旅立より目立ってるね!?
しかし、まあうちの学校変な人が多いからこれくらいでいいのかな。よくないか。
「ほらほら、背後を気にしてても仕方ないよ!前みて行こ!」
楽しげに声の弾むアリアに腕を引っ張られ僕たちは、晴れ渡る空の下、歩きだしたんだ。
アリアと僕はこうして旅立った。不安とときめきを胸に秘めて。
しかし、当たり前のことだけどアリアと野宿するなんて思わなかったな。これからは早く慣れないとね。
つづく
集団ストーカー被害にあってますので投稿が途切れたり、内容が消されたりして一話抜けたりすることもありますが、その時はすみません!自分は悪くないけども!