第8話 後悔のその先
任務から帰ったアルベルトは、帰り道で言われた言葉を思い返していた。
(自分の失敗を、ただ運が悪かっただけだと嘆き、他人のせいにして反省もしない奴が、騎士団員に相応わしいはずがないだろう?)
今の自分は騎士団員には相応しくない。
言われてみて初めて気づいた。
かつて自分が騎士団員だった頃は、失敗を嘆くことなどなかったはずだ。
後悔する暇があるなら反省して、次に活かせ。
少しでも自分の成長の糧にしろ。
そう思っていたはずだ。
降格処分になって以来、視野が狭くなっていた。
当時は確かに追い詰められていた。
精神の安寧を保つために、何かのせいにせざるを得なかった。
だが、今、こうして冷静に向き合えるだけの精神を取り戻した。
改めて当時の失敗を反省する必要がある、元騎士団員として。
そうして、因縁の討伐作戦を思い返していく。
探索部隊として、賊の存在を察知した。
本隊に報告すべきか考えていたら、カールがすでに動いていた。
カールをフォローするためにアルベルトも動いていた。
時間はかかったが、討伐を完了し、一息ついたところで隠し通路を発見し、自分の過ちに気づいた。
賊の存在に気づいた時点で、すぐに報告に向かうべきだった。
賊が少数ではない時点で、報告せよと言われていたのだ。
本来であれば迷うことなどなかったのだ。
迷ったのは、探索部隊としての役割と、カールの不満の解消を天秤にかけてしまったからだ。
カールの不満は確かにあった。だが、任務における役割を蔑ろにしていいほどのものであるはずがない。改めて考えれば当たり前のことだ。
なぜそんな簡単なことがわからなかったのか。
自分の実力を過信していたのだろう。
カールの世話役のような存在になっていて、油断していたのだろう。
そして、作戦の全体像も知らず、勝手な判断をしようとしてしまった。
判断できないところまで判断してしまった。
作戦の判断は上官の役目であって、探索部隊である自分の役目ではないのだ。
自身も慢心も油断も全て捨てて、改めて考えてみる。
騎士団員として一番大事なものはなんだ?
騎士団の役割は、王族貴族の敵を撃つこと。
そのための作戦や任務が立案され、実行される。
ならば、騎士団員としてどうあるべきか。
作戦や任務の完遂に資することだ。
そしてそのために、上官の指示に従い、役目を果たすことだ。
それが全てなのだ。
役目を果たすために全力を尽くす。
そのためには、油断も慢心もいらないのだ。