第7話 清算
新しく自分の目標を定め直したアルベルトは、心機一転して見習いとしての役割に徹していた。
見習いとして、騎士団員に付き添って任務を行っていた。
降格したとはいえ、元騎士団員だ。
実力はそこらの見習いとはレベルが違った。
そして、騎士団員たちもそのことを認識していたので、任務においてはアルベルトの存在を重宝していた。
おそらくは、贖罪の気持ちもあったのだろう。
任務をこなすにつれて、アルベルトは少しずつ自信を取り戻していく。
何度か任務を遂行したのちに、因縁の地での任務が指示される。
賊の討伐作戦の舞台となった森での任務であった。
とはいえ、以前とは危険度が大きく異なっていて、少数の賊の討伐が今回の任務だった。
アルベルトにとっても騎士団員にとっても因縁の地である。
騎士団員たちは今回の任務はやめておいた方がいいと思っていたが、アルベルト自身は過去を清算するいい機会だと、いつも以上に燃えていた。
アルベルトの強い意向もあって、任務を遂行することになった。
アルベルトも騎士団員もいつも以上に緊張していた。
いつも以上に周囲を警戒し、奇襲に備えていた。
討伐対象の賊が見つかってもなお、油断せず、周囲の警戒を続けた。
賊を注意深く観察し、確実な隙ができるのを待ってから討伐を実行した。
任務は何の問題もなく完遂された。
実際のところ、あの因縁の作戦が特殊で、騎士団員が本来の実力を発揮すれば達成できない任務などほとんどなかった。
任務の帰り道、アルベルトは上機嫌だった。
過去を乗り越えたのだ。
騎士団員に戻るための重要な一歩となるだろう。
「俺が騎士団員に戻る日も近いだろう。」
「元より実力はすでに騎士団員と同等かそれ以上なのだから。」
「かつての失敗を帳消しにできるだけの成果が上げられれば、すぐに戻れるだろう。」
「あの作戦は運が悪かっただけだ。」
「カールと2人で探索についていなければ。」
「カールが見つけた賊にすぐさま襲撃を仕掛けなければ。」
「即座に本隊に報告していたはずだ。」
騎士団員たちは苦笑いしながら、アルベルトの熱弁を聞いていた。
アルベルトの言い分もわかるのだろう。
実際、カールの素行には問題があった。
そのことは騎士団員の中でも有名な話だった。
アルベルトはカールをうまく扱っていたのだ。
騎士団員たちは否定も肯定もできなかった。
ただ一人を除いては。
「本当にそうか?」
「カールは確かにすぐに突っ走るところが問題だった。」
「カールに責任の一端があるのは間違いない。」
「だが、お前に何の落ち度もないというなら、それは間違いだ。」
「昔のお前ならまだしも、今のお前は騎士団員には相応しくないぞ、アルベルト。」
「自分の失敗を、ただ運が悪かっただけだと嘆き、他人のせいにして反省もしない奴が、騎士団員に相応わしいはずがないだろう?」
その言葉にアルベルトは、何も言い返すことができなかった。