第5話 降格処分
騎士団の敗走が王族貴族に伝わるのに、そう時間はかからなかった。
元より王族貴族は、賊など害虫程度にしか思っていない。
多少数が多くなったとはいえ、害虫駆除もできないのかと、騎士団の実力を疑問視する声が上がっていた。
賊の討伐に失敗した原因を、いつも以上に厳しく問われることになった騎士団は、作戦に参加した団員全員を招集した。
賊が事前に騎士団の奇襲を察知していたとは考え難かった。もし、事前に察知していたなら、罠を設置するなり、襲撃前に撤退するなり、別の策を講じたはずだ。
つまり、賊は騎士団が奇襲を開始した後に作戦を練り、反撃してきたのであった。
地の利は確かに賊にあっただろう。騎士団側が把握していない隠し通路が存在していて、それを使って騎士団の背後に回り込んできたのだ。
事前により入念な調査を行っていれば、隠し通路の存在に気付けたかもしれないが、100人以上の賊が潜む場所に潜入して情報を得るのは至難の技だろう。
賊による背後からの反撃を、もっと早く察知できなかったのか。
何のための探索部隊か。
探索部隊の1チームが、賊に遭遇して討伐したのではなかったか。
なぜ即座に報告しなかった。少数でなければすぐに連絡をするべきだろう。
非難の矛先は、アルベルトとカールに向いた。
アルベルトとカールは確かに任務に背いていたので、言い逃れのしようもなかった。
結果論でしかないが、アルベルトとカールの選択は大きな間違いだったのだ。
アルベルトとカールの選択ミスが、騎士団の敗走を招いた。
それが騎士団の出した結論だった。
状況が状況でなければ、そこまで責められることはなかっただろう。
だが今は、王族貴族からの信頼が揺らいでいる状況であり、信頼回復のために何らかの策を講じないわけにはいかなかった。
アルベルトとカールは降格処分となり、騎士団員から見習いへと格下げになった。
そうして、騎士団の信頼が守られたのだ。