第3話 探索任務
カールは不満そうな顔をしながらも、任務を遂行していた。
他の任務であれば、真っ先に敵に斬りかかるカールであるが、隠密で探索する任務も問題なくこなせるだけの実力がある。
見習い時代の教育の賜である。
カールは探索の中で賊が見つかることを期待しているようだった。
少数の賊であれば、その場で処分していいと言われているからである。
アルベルトもどちらかと言えば、探索よりも本隊に加わりたかったし、カールの不満が解消できるなら、賊が見つかる方がいいと思っていた。
しかし、なかなか賊は見つからず、10分以上が経過し、すでに本隊が動き出している頃だと思われた。
(今回は探索のみで任務完了かな)
アルベルトがそう考えていたその時だった。
ついに賊を見つけたのだ。
しかも少数ではなく、10人程度の賊の集団であった。
アルベルトは考えた。
明らかに少数と呼べる人数ではない。
本隊に報告すべきだろう。
そう考えていると、カールが小さい声で言ってきた。
(13人だ。俺たち二人ならなんとかなるだろう。)
アルベルトは迷った。
(それにここで人数を減らしておけば、本隊も楽になる。)
カールは今にも突撃しようとしている。
13人に対してこちらは2人。
人数からすれば不利だが、多少の武装はしているとはいえ、相手はただの賊だ。奇襲されるとも思っておらず、全く警戒していない。
それに対してこちらは、十分な経験を積んだ騎士団員だ。
やられることはないだろう。いざとなれば撤退すればいい。
だが、しかし…
などと迷っていると、カールはアルベルトの支持を待たずに行動を開始した。
カールはこの場で賊を奇襲して、討伐するつもりなのだ。
仕方がないと諦め、アルベルトはカールのサポートを開始した。
賊の最後尾から順に、可能な限り音を立てずに処理していく。
結果としては、賊13人の討伐は無事完了した。
隙を伺う必要があったため、多少の時間はかかったが、戦闘開始から15分程度で討伐は完了した。
アルベルトにもカールにも大した被害はなかった。
無事に成し遂げたことに安堵しつつ、アルベルトは思考を巡らせる。
彼らは一体どこから現れたのか、なぜここにいたのか。
そうしてあたりを見回して不審なものを見つける。
岩陰に隠れて気がつかなかったが、そこには出入口のようなものがあった。
(彼らはここから出てきたのか。)
(もしかして、根城に繋がっている?まさか…)
そして、重大なことに気づく。
カールに告げる。
「急いで根城に戻るぞ!」
「どうしたんだよ?」
「説明している時間はない。いいからついてこい!」
本隊に合流するために、賊の根城に向かって全力疾走を開始した。




