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最終話 因縁

アルベルトが騎士団員に復帰して、しばらくが経った。

騎士団は着実に任務を遂行していた。


騎士団の活躍により、賊の数も減り、王族貴族を脅かすものはなくなりつつあった。


このまま賊がいなくなるかに思われたが、期待通りにはいかなかった。


騎士団に討伐されていくにつれて、賊の間にも共通認識が生まれていた。


このままでは、自分たちの居場所がなくなるのも時間の問題だ。


賊も自分たちを守るために必死に策を講じた。


現存する賊が団結して、騎士団に対抗しようという流れになった。


くしくも、因縁の作戦の再来であった。


騎士団員は皆、心のうちに闘志を燃やしつつも、状況を分析していた。


今度こそ成功させる。そのために冷静に動かなければならない。


入念な調査と作戦会議を行い、様々な可能性を考慮した。


しっかりと準備して迎えた作戦実行当日。


森へ集合した騎士団。


探索部隊を編成して警戒にあたらせる。


隠し通路の存在もすでに判明していて、出入り口を監視させている。


突入部隊の戦力も十分。


突入して一気に制圧すれば作戦完了である。


ここまで備えてもなお、騎士団員は誰一人として油断していなかった。


アルベルトは突入部隊の指揮を任されていた。


作戦が失敗する余地はなかった。


順調に制圧する区画が増えていく。


アルベルトは賊の大将を探していた。大将を討伐すれば、賊は戦意を喪失させられるからだ。


さらにいくつかの区画を制圧した後、ようやくたどり着いた。


明らかに他の区画よりも広くつくられていた。


ここに大将がいるのだろう。


気合を引き締め直して突入するとそこにいたのは。






カールだった。


共に降格処分となり、しばらくして、騎士団員になる道を諦めて辞めていったはずだった。


その後の音沙汰は聞いていなかった。

田舎にでも帰ったのだと思っていた。


だが、少し考えてみればわかるだろう。


騎士団員になる道を諦めたとはいえ、元騎士団員として十分な戦闘能力を身につけている。

騎士団以外でその実力を発揮しようとすれば、賊になる可能性が高い。


荒くれ集団の中で、騎士団員と同等の力があれば、大将になるのにそう時間はかからない。


ただ、一つ疑問だった。

なぜかつての根城を占拠しているのか。

隠し通路の存在が知られている以上、奇襲されれば後手に回る可能性が高い。

何か罠を仕掛けているのかとも考えたが、ここまで進んできた中でそこまで大きな障害も罠も見つからなかった。


アルベルトには答えを出せなかったので、目の前の大将に集中することに決めた。


「降伏しろ、カール。この根城は間も無く完全制圧される。」


「そうだろうな。全力を出した騎士団が、賊なんかに負けるはずがない。」

「お前は騎士団員に戻れたんだな、アルベルト。」


「そうだ、もう何ヶ月も前のことだ。俺は同じ失敗は繰り返さない。」


「ならば、大将たる俺を殺して、任務を完遂させてみせろ。」


「ああ、この因縁に決着をつける。覚悟しろ、カール」


そう言うと、アルベルトとカールは走り出す。


あと一歩でぶつかり合うというところで、カールが微かに笑う。

攻防が始まるかに思えたが、決着は一瞬だった。

カールは立ち向かうフリをして、アルベルトの一撃を無抵抗で受け止めたのだった。


「カール、お前、どうして。」


「騎士団に戻れないと悟った俺は、」

「賊への復讐を誓った」

「だが、まともに立ち向かったところで多勢に無勢だ」

「なら、賊の内側に入って隙を窺うことにした」

「いずれ騎士団が討伐しにくることもわかっていた」

「その時に、確実に討伐されるように、内側から動いていたのさ」


「すまない、俺はお前を」


「処分のことなら、俺のせいだ、お前は悪くない」

「今回のことも、俺が選んだことだ」


「すまない…」


「謝ってんじゃねーよ」

「騎士団として、任務を遂行しろ」


「言われなくても」


そうして、アルベルトは声高に宣言する。

「賊の大将を討ち取ったぞ!」


「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!1」

騎士団員たちの歓声が聞こえる。


ついに、賊の討伐作戦が完了した。


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