第1話 騎士団
これは、世界に身分格差が色濃く残っていた時代の話。
王族貴族が国を統治していた。
平民のための政治という概念はなかった。
既得権益を維持し、さらなる権力、財力、武力を求める。
そのための政治であった。
当然、平民からの指示などは得られない。
平民に得られるのは、現状を受け入れて上流階級のために日々働くか、あるいは国の支配から抜け出して賊となるか。
いずれにせよ、平民にとって、平穏も明るい未来もなかった。
平民の中には、武力の才を持つものもいた。
才あるものたちは、国を、あるいは王族貴族を守るための力として重宝されていた。
武力の才を見出された平民は、訓練場に連れてこられ、武術の修行を積む。
数年間の修行を積み、最低限の能力を得たのち、騎士団見習いへと昇格する。
騎士団見習いになると、騎士団のメンバーと行動を共にするようになる。
騎士団の世話係をしつつ、度々任務に同行し、騎士団員の働きを見学したり、時には一緒に任務を遂行したりもする。
そうやって、少しずつ騎士団員としての仕事や立ち振る舞いを身につけていく。
やがて、任務で成果をあげられるようになれば、見習いから騎士団員へと昇格できる。
彼もまた、長い年月をかけて、ようやく騎士団員となったものの一人だった。
彼の名前はアルベルト。
騎士団員となって2年目だった。
最初はどうしても不安だったが、任務をこなして1年も経てば、これまで鍛え上げてきた力が、実戦でも役に立つという実感が湧いてくる。
そして、2年目になり、騎士団員としての自信がついてきた頃だった。
最近は、同じく騎士団員で、同期のカールと共に任務を行うことが多かった。
カールは自信家なのか、アルベルトが感じていたような不安は全くないようだった。
任務になると誰よりも真っ先に敵に突っ込んでいく。
切り込み隊長といえば聞こえがいいかもしれないが、そのフォローをアルベルトが担っているという状況だった。
カールは確かに強いが、アルベルトと共に任務をこなすからこそ、その真価を発揮できる。
それが騎士団員たちの共通認識だった。
そんな中、新たな任務が告げられる。