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覇王新生 最強の変身能力は取り扱いに注意せよ!  作者: 星成
第1章 【暗闇の蛇】編
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第7話 一歩前進


 屋敷から出たはいいが街から少し離れていたらしく、道だけはあるが、人や馬車は通ってこない。


 徒歩で進んでいるとへベルナが話始めた。


「あなたの容疑は魔石採掘場で多くの意識不明者を出した事ですが、闇ギルド【暗闇の蛇】の関与が疑われています、まずはマスター・リードルを捕まえて情報を探らなければなりません」

「そのギルドって魔石採掘場を占拠していた?」


 よくよく考えれば主犯格の事を全然知らない、【暗闇の蛇】ってのがその闇ギルドの名前なんだろうが。


「【暗闇の蛇】が何をしようとしているのかは正直わかりません、組織だってこそこそと活動はしていたみたいですがギルドの結成は最近になってからですから」


 ベベルナは目を瞑りながら説明する。


「財源として魔石が目的かと思えば外部から盗賊を招いていたりよくわかりません」

「でも元々そこにいたんだろ? なんでサッサと動かなかったんだ?魔石ってかなり使いどころあるらしいし、そんな奴ら早めに追い出せば良かったのに......」

「簡単に言わないでください、そういう事に力を入れる事が出来るようになったのもここ最近ですし......」

「最近?」


 するとへベルナは少し悲しげにうつむく。


「......皇帝陛下が崩御されましたから」

「あ、そうだったな」

 適当に誤魔化す、皇帝の死を知らないというのは流石に怪しまれるだろう。

「いままではあまりこういった事に関心はありませんでしたが、現皇帝陛下は違いますので一斉摘発も行われるようになりました」


 どうやら先代の皇帝は少々問題があったようだ。


「ふぅむ、ここら辺に出るはずですが......あっあまり離れないでください、危ないですよ」

「へぇ」


 思えば、いままでは余裕がなかったから、周りを見る事もしなかったな。


「あっスライム――」

「えっ――ぎゃ――」


 ものすごい弾力ある何かが体当たりしてきた。


「なっ」


 青色のぶよぶよした奴がうねうねしてる、これがスライム?

 薄い青の奥に濃い青がある。


「アキラ、さぁ、スライムです、魔法で戦ってください」

「おう!」


 ぶよぶよとしたスライム俺に向かって飛んでくるが――


「『ファイアボール』」


 俺はそんなスライム目掛けて魔法を放つ!


 バァンッ!


 スライムは爆発を引き起こして溶けて行く......すごい気持ち悪いな......


「おめでとうございます!アキラ、スライム撃破です!」

「......」


 そうか、俺、変身の力ではない俺の力で初めて魔物を倒したのか!


「やった、やった!おいおい、へベルナ!俺の初めての魔物退治を見てたか!」

「えぇ、見ていましたよ、一歩前進ですね」


 万歳万歳をしながら歓喜している様をへベルナからにこやかに見られているのに気が付いた俺は、なんだか恥ずかしくなってやめる、いや、嬉しいからつい......


「コホンッ......あっそういえば、スライムゼリー」

 思い出した、スライムゼリーの回収が依頼だった。

 しかしスライムはドンドンと溶けている。


「スライムゼリーというのは、スライムの核の所にある濃いエキスの事です」


 へベルナは溶けているスライムの中から濃いスライムをぐちょっと持ち上げて

「はい」

 俺に手渡す。

「ひああぁ......」

 少し冷たくてぐちょぐちょ、人によって気持ち悪いと感じるかもしれない。


「まぁ上級者になるといちいち倒さずに、生きたままそれを抉り出すようになりますね」

「えぇ......」

 へベルナは容器の中にスライムゼリーを回収する。


「スライムゼリーって何に使うんだ?」

「料理でしょうね」

「料理!?」

「知りませんか、良く好む人もいますよ、冒険者業をしてる人は一度くらい食べた事あるでしょうし」

「へぇ、美味しいのか?」

「ハチミツとか混ぜて食べるのが普通です、水分とか取れますから危機的状況の時の非常食ですかね」


 スライムゼリーねぇ。


「そういう意味でスライムはありがたい存在です高所から密室、様々な種類のスライムがいますからある程度は覚えておくと便利ですね」

「へぇ」


 へベルナはしたり顔をしながら森を歩いてく。


「スライムに限りません、魔物というのは何処にでも潜んでいますから、場合よってはそういった魔物も食べる事になるでしょう、それにこういった森の中で遭難したら虫とかそういう魔物も――「あっ前に――」



 目の前に蜘蛛の巣が、と言おうとしたが――



「食べざる――」



 かなりでかい蜘蛛の巣だったようだ、顔面と三角帽子を見事に包んでいる。



 しかもなんて事だ蜘蛛は多くの蜘蛛の子を宿していたらしく――



 わらわら――



 そんな恐ろしい光景に俺はただ鳥肌を立てた――




「キャアアアアアアァァァッッ!!」




 森の中をへベルナの叫び声が木霊したのだった――




 あれからどれだけ経ったか......へベルナはまだのたうち回っている。


「あー大丈夫か」


 あんな悲劇を味わったら誰でもそうなる。


「ぜぇ......はぁ......」


 四つん這いになりながらもどうにかして立ち上がり。


「......さぁ、あと4匹討伐しますよ!良いですね!?」

「えッ」

「時間は待ってはくれませんよッ!」


 へベルナはそう言ってまた先へと進むのだった。



 ■



「『ファイアボール』」

 スライムを見つけたら撃つ、最初は狙いを定めるのに時間もかかったが、5回目ともなると、慣れてきた。

「だいぶ慣れてきましたね」


 特に問題はなく終わった。剣を使う機会なく終わってしまった......


「しかし、最近魔法を覚えたというのにアキラは成長が速いですね」


 平均が分からないからなぁ、自覚がない。


「そんなに?」

「はい、個人差はありますが、アキラの成長スピードは速いですよ」

「えっすごい?」

「えぇ、すごいですね」

「そぉかねぇ......」


 称賛には弱い。


「しかし、慢心はしないでくださいね、確かにあなたの『ファイアボール』の威力は強いですが、基礎魔法というのは汎用性の高さが強みであり弱みです、読まれやすいという弱点がありまして――」


 そしてへベルナはいつもこのように説明をしてくれる、正直かなり長いし話半分で聞いてしまうこともしばしば.......でも、俺の事を思っていることに感謝してる。


「――ただ剣士となるからには、やはり補助魔法による強化系魔法は覚えておきたい所ですね」

「攻撃魔法より難しいんだっけ、補助魔法は」

「はい、ただ難しいのは人に付与する場合ですね、自分でかける場合にはコツを掴めばできるはずです」


 へえ、強化魔法はかなり汎用性ありそうだし、いつか覚えたいな。


「では、戻りましょうか」



 ■



 へベルナは俺を別荘に返すとそのまま依頼達成の報告の為にギルドに戻るという。ギルドと言えば......


「へベルナのギルド所属ってどこなんだ?」

「あぁ......【赤の壁(レッドウォール)】というギルドです」


 それって確か......


「被害を受けたギルドの一つですね、当時ギルドマスターであったネイロス=ザッドルアは責任を取り、新たにアーヴィ=パウンがマスターになりました」


黄金の鍵爪(ゴールドクロウ)】は多くの意識不明者を出した。

緑の園(グリーンガーデン)】は唯一被害者ナシ

赤の壁(レッドウォール)】は責任を取りギルドマスターの変更


「へベルナは大丈夫なのか?」

「......安心してください、こう見えてもあなたより年上ですからね」


 俺を匿ってる所為で彼女だって苦労しているはずだ。


「それでは、また明日」


 そういってへベルナはギルドへ戻っていった。


「これは甘えてばかりじゃいられないな」


 そうだ、へベルナがこんなに苦労しているのは俺の所為だ。


「へベルナは俺なんかに時間を使う必要はない、俺が早く強くなってへベルナを開放してやらないと......」


 強くなって【暗闇の蛇】のギルドマスター・リードルを捕まえて、俺の容疑を晴らす。


 そうすればへベルナは偽りの旧友である俺の為に頑張る必要はなくなる。


 俺もこの世界を生きる余裕ができる、そしたら、お金だって稼げる、金があれば色々とできるようになるはずだ。

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