ご褒美
「うわあああ。だめだよ、人の顔を踏んじゃだめだよ白」
子猫の白が、寝転がった伯母さんの顔に乗っているのを見て僕は驚いた。
急いで白をどかそうと立ち上がる前に、伯母さんは白を顔に乗っけたまま静かに手を挙げて僕を制止した。
「いいのですちーくん。そのままで」
「え、だって、そのままの足でトイレだって入るのに」
白はまだ小さいからか、自分のうんちですら時折踏む。砂をかけるのもまだ上手ではない。
「むしろご褒美です」
えええええええええ。
「見てくださいこの肉球。素敵なピンク。この柔らかさに少しの湿り気、色味に至るまで全て猫の健康状態を如実に表してくれるのです」
「この子のピンクはそう、至高。至高のピンク。だからといって、他の色が劣っているなどと言う思考こそ愚行。時には黒であったり、ピンクに黒のブチがある子もいる。
その全てが愛おしく、その全てが健全であるよう全力で努めるのが我々の使命なのです」
何故か所々韻を踏み始めたのが少し気になったけれど、触れてはいけない。
もう伯母さんは、僕の知る頭がよくて優しいだけの伯母さんではないのだ。
伯母さんは、すーはーすーはーと離れた僕からも聞こえる息遣いで白のお腹の香りをたっぷり嗅いだ後、今日もいつものように崩壊した。
「白ちゃぁぁあん今日もかっわいいですねぇええええ」