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僕と猫と伯母さんと、時々ナニカの物語  作者: 十字たぬき
僕と伯母さんと猫の日常 SS

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13/23

さくらねこ

 




「あ、猫だ」


 前から野良猫はよく見るけれど、伯母(おば)さんの家に白が来てからは、見つけると嬉しい気持ちが大きくなった気がする。


 その野良猫は急いで逃げなかったけれど、離れた所からいつでも逃げられるようにして僕の事を観察してるみたい。僕もお返しにと猫を観察してみる。


 黒のハチワレ。黒い部分が前髪みたいで面白い。でも、その耳は何かに齧られたみたいだった。


 可哀想。


 人に飼われていないと、喧嘩で傷ができたり、車に轢かれたりして死んじゃうこともあるのだ。気づいたら凄く悲しくなって、誰かに聞いて貰いたくなった。


 伯母さんなら、白の時みたいに助けてくれるかな。











「ちーくんが見かけたのは、きっとさくらねこですね」


 伯母さんに助けを求めるつもりで話をしたら、その猫を知ってるみたいでびっくりした。


「さくらねこ?」


「猫の耳はこんな感じでしたか?」


 素早くキーボードを打って、見せてくれたパソコンの画面には、この間見た猫と同じように耳が齧られたみたいになっていた。


 また可哀想な気持ちが大きくなって、胸がきゅうっと苦しくなる。


「安心してください、これは猫の命を守るためなのです」


 そう言って伯母さんは微笑んだ。けれど、猫の耳を齧るのが命を守るのに繋がるなんて訳がわからない。


「どういうこと?」


「野良猫は放っておくと、かなりの数に増えます。色々と問題があるのですが、わかりやすい例をあげると、飼い主がいないので、うんちもおしっこもそのままです。ちーくんの家の周りが猫のうんちだらけだったら嫌じゃないですか?」


 想像してみた。白が伯母さんちで飼われてから知ったことだけど、白のうんちやおしっこは結構臭う。


「凄く嫌だ」


「そうですよね。だから、保健所に苦情が入ると猫は捕獲されて殺処分されていました」


「それはもっと嫌だ!!みんなで協力してうんち片付ければいいじゃん!!」


「そうですね。でも、皆が皆、猫好きな訳では無いんです。この他の理由でも、野良猫が増えて困る人は大勢いました」


「そんなこと言ったら、鳩だって雀だってうんちし放題だ。だけど、テレビで鳩の殺処分なんて聞いたことないよ。鳩はよくて猫がだめなんておかしい」


 なにか反論したくて口から出た言葉だけど、凄く正しいことを言えた気がした。


「そうですね。でもそう言うだけでは問題は解決できないので、猫が殺処分されるのが嫌で頑張った人達がいるのです」


「みんなでうんちを拾ったの?」


「それも大事な事ですが、うんちを拾うだけでは解決しません。拾ってくれる人達の生活には、学校も仕事も家事もあります。猫の数が増え続けたら、拾っても拾っても拾いきれません。餌を探した猫たちにゴミだって荒らされます」


「じゃあどうしたの?」


「猫が増えないように、子どもができない手術をする事にしたのです」


 手術と聞いて、僕は怖くなった。それは病気や怪我を治すためにするものだ。健康な猫にするのは良い事なのか僕にはわからない。


「手術をする事に反対ですか?」


「ちょっと怖い」


「同じように怖く感じたり、可哀想と思い反対する人もいます。しかし、手術をして猫の数が減り、猫のお世話をしてくれる人の管理が届くようになって猫の殺処分は減ったのは事実です」


 ああ。


 手術は怖いけれど、うんちを拾うだけじゃ解決出来ないことを解決した人達がいたんだ。


 それはすごい事だと思う。


「手術をしましたよという証に、麻酔が効いてるうちに耳をカットした子達をさくらねこと呼びます」


 そう言って伯母さんはパソコンに目を向けた。


「耳がさくらの花びらみたいでしょう?」


 よくやく僕は、耳を齧られた可哀想な猫じゃなくて、生きて欲しいと誰かに思われた素敵な猫なんだとわかった。


 生きるための証。


 色んな人が頑張った証。


「悲しいことに、殺処分はゼロにはなっていません。とは言っても、日本には猫を好きな人が昔から多いのも事実です」


 パソコンの画面の一覧に映った猫達を見て、伯母さんの目が獲物を狙う猫のように瞳孔が開いてきたのがわかったから、僕はナニカの気配を感じて、今日はいいお話で終わるようにそっと目を閉じた。


 猫おばさんたち、いつもありがとう。

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