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8、日常のすすめ

 


 機械の稼働音以外はなにも聞こえない部屋の中で椅子にこしかけたアルカナは足組みしたままじっと眺めていた。


「……」


 しばらく機械を眺めていたが大きく変化はしないもので今度は窓際に置かれた年季の入った作業用デスクの閉まりきれていない引き出しに手をやる。


 思い切って一つを引き出すと……。


「うわぁ……」


 そこには書き込みがたくさん為された沢山の夢と希望がつまっていた。何枚かは数えられない程の紙の束が入りきらないボリュームでここぞとばかりに自己主張してきていた。


「こんなに……」


 上から数枚取り出してみる。

「なになに? ……汚れた大気を正常化し続ける装置の設計図、賢者の石の作り方、磁気浮上式移動手段原案、通信ネットワーク網の整備案、介護用魔道具……幻の秘薬についての考察……」


 広範囲殲滅用の魔方陣や兵器利用が出来るものは、図面や作成方法が曖昧(あいまい)にぼかして仕上げないままバツがつけてあった。

「危険注意って……確かに……」


 どれもこれも(ほとん)どがこの世界ではオーバーテクノロジーと言われても過言ではないモノばかりが詰め込まれた、その手の人からしたら夢の玉手箱だった。

「すごい……、あの(アルカナ)って天才なんじゃ……?」


 そんな凄い子は一体何処に行ってしまったのか。いなくなることによって発生する社会的損失と行ったらとてつもないんじゃないかと思われる。 



「アルカナ、毛玉ごはんですよ!」

「あ……はぁーーい!」

 キッチンからマナの呼ぶ声に反応するとそれを再度詰め込むと放置したままキッチンへ急いだ。





 その後は、気になって何度も確認しに行きつつようやくで夜が明けた……。


 ベッドの足元で目が覚める。ベッドのセンターは相変わらずの愛犬。さすがトップと名付けただけあった。


「……うぅ、眠い」


 眠い目をこすりながらベッドを出ると、とりあえず隣の部屋に裸足で駆け出していた。


 ガチャ!



「できた?」

 素材投入用の引き出しの隣のボックスの(ふた)を持ち上げる。


 そこにあったのは記憶の中のそれと寸分違わぬ(てのひら)サイズのスマートフォン。


「スマホだぁ……!」


 条件反射で電源ボタンを長押しをする。どういう仕組みか電気がついたが一切携帯らしい反応はしなかったが、なぜ知っているのか圏外のマークすら表示されていた。


「やっぱりだめかぁ……」



 前世は親が関わって来ない分いじりにいじり倒して、スマホが無いと死んでしまうんじゃ? と家政婦の坂口さんに言わしめた程だった。


「……はぁ、でもまあ、心の()り所を取り戻したと言うことにでもしておこうかな」

 過去の心の拠り所、スマホをポケットにしまう。


 たたた……!


『ウウ……わぉん!』

「うわぁ! ちょっと!」


 感傷的(センチメンタル)に浸っていたら後ろから(あるじ)を起こしそびれたトップの逆襲を食らってしまう。


『きゃうん……!』


「トップ落ち着いて! ちょっと……話し合えば分かるって! ああああ……べたべた!」


 隙をついた容赦ないペロペロ攻撃と甘噛み戦法はアルカナにクリティカルヒット。あっという間に寝間着の袖口は滴る勢いだ。


「……トップ。いくらなんでも流石に怒るよ?」


『きゃうん……』

 甘えるように見上げる潤んだ瞳が強烈に可愛い愛犬トップ。


「うう、うちの子は可愛いぃ……くそぅ子犬めぇ!」

 それを小脇に抱えて着替えに戻るアルカナだった。




 ご飯にやってきたアルカナの余りの惨状にマナが先にお風呂に入れてくれた。

「アルカナ、ペットを可愛がるのは悪くないですが、ちゃんと(しつけ)はした方がいいですよ?」



「うぅ、大丈夫。午後からそこら辺をトップとしっかり話してみる!」

「……はぁ、がんばって? とりあえずごはんを温め直しますから」




「トップ!午後からはどっちが格上か思い知らせてやるんだからね?」

『きゃうん♪』

 ご主人に遊んで貰えると思ったのかトップがもぎれるのではないかと心配してしまう位に尻尾を振って喜んでいた。





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