六話『馬鹿と天才は紙一重〜Side.??』
「ふひひっ、やった!俺はやったぞ!ついに完成した!!機動要塞型ダンジョンだ!踏ん反り返ってる余裕ぶってる奴らのダンジョンをぶっ潰してやる!はーはっはっはっ!!」
高笑いが止まらんわ。
宇宙船の小さな個室で俺は有頂天になっていた。
苦節十年、数多の失敗を乗り越えて唯一完成した逸品だ。これ以上のものは今後作れるか分からない。それほどの出来映えだ。
我が子を見守るように俺はダンジョンの種を送り出した。射出は成功だ。無事に辿り着くだろう。
これからの未来を想うと笑いが止まらない。
「在来生物が逃げていかないだと?どういうことだ?死にたがりの馬鹿か?ま、まあ良い。魔力が飽和してメガフロッグみたいに膨らんで破裂するか衝撃の余波でズタズタになるはずだ。ははっ、もう勝ったも同然だな。優雅に風呂でも入ってきますかな」
この時の俺は慢心しきっていた。
優雅に花なんて風呂に浮かべている場合ではなかった。
いや、でもあれは楽しかった。後悔はしていない。
「へ?なんだこりゃああああ!!俺の機動要塞きゅんはどこにいった!?んんんん???なんであの在来生物がダンジョンになってやがる!!しょ、しょんな馬鹿にゃ。俺のロマンが!十年の集大成が!最高傑作が!俺の機動要塞が……。なんでだ、なんでこうなっちまったんだああああああ!」
俺の絶叫は在来生物に届かない。
ガチャリと空いた扉の音に振り返るとダンジョン監査委員がいた。
やばい。
「ダンジョン違法建築容疑で貴方を逮捕します。ご同行ねがいます」
「嫌だあああああ!!離せえええええええ!!俺は機動要塞を作るんだあああああ!!」
「お連れしろ」
俺はこうして違法建築で逮捕された。
だが、これはまだ序章に過ぎない。俺には輝かしい未来が広がっている。諦めてたまるものか。英雄は遅れてやってくるのだ。
お読みいただきありがとうございます。
次回から視点が戻ります。