四話『最期』
短めです
「ダンジョン警報発令!ダンジョン警報発令!…」
ダンジョンが落下してくる。
逃げなきゃいけないのに体がもうピクリとも動かない。
「がはっ」
内からせりあがる圧力に身を任せたら血を吐き出した。
自分を構成する物質が抜け落ちていく。
(なんでだよ。なんで思うようにいかないんだ。僕は今日死ぬために産まれてきたのか?違う!そんなことのために産まれたわけじゃない。憎い。弱い自分が憎い。運命が憎い。魔物が憎い。ダンジョンが憎い。)
迫りくるダンジョンの種を睨みつけて僕は呪詛をはく。
意味がなくとも、例えなれなくとも、僕は探索者だ。
僕は最期までダンジョンに抗い続ける。僕を食らう魔物は腹を下して後悔しろ。
死が迫ってきた。
僕を嘲笑うようにダンジョンの種は僕に向かって落ちてくる。
最期の瞬間まで目は閉じない。僕は前を向いて死ぬ。意味はなくとも意地は通し抜く。
直撃だった。
体をぶち抜いた種が発芽する。
ダンジョンの種が地に着いて最初にすることは芽生えだ。芽生えてダンジョンを構成する。
体の中が溶岩になったようだ。煮えたぎるマグマが焼き付き形になろうとして僕の中から溢れ出そうとして失敗している。
ダンジョンの種が魔力を拒むこの体に阻まれて僕の体に押しとどめられている。
(ざまあみろ)
僕は笑った。
G級で何もできないと思っていたが、僕の中のダンジョンが何もできずにいる。
体を突き破った純粋なエネルギーはもう既にない。ダンジョンはもう何もできない。
ただ僕と一緒にくたばるのだ。僕は探索者になれなかったかもしれないが、未来の脅威を防いだ。
口や目玉から飛び出そうとするダンジョンを留め続け、やがてダンジョンは沈黙した。
安心したからか僕は気を失って気絶した。
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