二十二話『ギルドにて』
「俺は認めないぞ!」
ギルドに戻ってマークさんが彼の入団を検討していると話すと開口一番、タタンさんが否定してきた。僕もそう思う。
けれど、ヘレンさんやオスカーさん、ミラさんは歓迎しているようだ。
「認めるも認めないも彼の事で知ってる事はG級ってことだけなんですけど、彼を入れる理由を聞いても良いですか?それ次第です」
「強いから」
ギルドメンバーの一人が尋ねると白雪さんが即答した。質問していた人は驚いた顔だ。
真っ黒な長髪が光を受けてきらきらと輝いている。高身長でほっそりとしていて中性的な凛々しい顔立ちの女性だ。彼女の周りを女性が囲んでいる。
「同じS級にさえ期待外れと言ってた白雪さんが強いって言うなら私は良いと思います。性格にも問題ないんですよね?」
「あーそれは問題ないと思うぞ。ただのお人好しだ」
「なるほど、それなら特に反対する理由はないですね。ですよね?」
質問者が周りを見渡して問うと皆頷いていた。
それを見てタタンさんは頭を抱えていた。
「お前らはこいつの本当の姿を見てないから言えるんだ!こいつは人の皮を被った化け物だ」
「へぇ、怖がりのタタンが怖がるくらいには強いんだ」
タタンさんの発言に彼女の声が一段階下がった。
タタンさんの必死の訴えも強さの表現だと取ったようだ。それからもタタンさんは必死に僕のヤバさを語るが誰もタタンさんに同調しない。
「タタン、探索者には危険を察知する力は大事だけど、それに囚われてばかりでもダメよ?」
「ヘルさんも戦ってみれば分かりますよ…」
タタンさんの言葉にヘルさんと呼ばれた先ほどから話している女性はアゴに手を当てた。嫌な予感がする。
「それもそうね。改めてよろしくね、私はへクレールよ。縮めてヘルさんと呼ぶ人が多いから貴方もヘルでいいわ。えっとユキくんだったかしら?」
「よろしくお願いします、ヘルさん。…僕はユキですけど嫌です」
先が読めているので先に断ることにした。
彼女はそんな僕に優しく笑いかけてくれた。
この人なら大丈夫かもしれない。
「まだ何も言ってないのに断るなんてひどいわ。まあその通りなんだけどね。入団テスト代わりに私と戦ってもらうわ」
ふぁさりと長髪をたなびかせた。花のような香りが広がる。
彼女の周りを囲む女性たちがきゃあと黄色い悲鳴を上げた。
この世界では自ら動かないと勝手に何もかも決まってしまう。だから何かを望むには自分で行動するしかない。
「分かりました」
「決まりね。白雪さんやギルマスには及ばないけど【快晴】ギルドの一番槍として貴方を見極めさせてもらうわ」
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