二十一話『帰り道』
「やっぱり納得できない!」
「まだ言ってんのかよ、そろそろ諦めたらどうだ?」
あれから他の皆は納得したようで、ラキアス様も迷惑をかけるが頼むなんてお願いしていて、マークさんが大船に乗ったつもりでと偉そうにしていた。どうにも僕以外は円満に終わったみたいだ。
でも、僕はまだマークさんに納得できていなかった。
「だって、折角助けられたのにまたこんな理不尽な目に遭うなんてあんまりじゃないですか」
「勝つから問題ない」
「本当に勝てるんですか?」
僕の言葉にマークさんはピクリと眉を動かした。
それから急に高笑いした。
「はははっ、白雪がいるからS級にも勝てるだろ。そうすりゃA級程度ならなんとかなる」
「私は彼と戦わない」
「は?何を言ってるんだ、白雪。冗談だよな?」
「彼とはユキに戦ってもらう」
「「ハァ!?」」
慌てたマークさんが詰め寄るが白雪さんは予想外の答えを返してきて、僕とマークさんは揃ってうわずった声を上げた。
S級は探索者の頂点だ。いくら僕が強くなったと言っても白雪さんに勝てるとは思わない。
「G級の彼を殺したいのか?そもそも彼はギルドの一員じゃない」
「ユキなら勝てる。S級を倒して自信を持って」
ドラゴンを倒す場面を見られたからだと思うが、あれは白雪さんみたいなS級ならもっと簡単に勝てたはずだ。そんなS級に勝てなんて白雪さんの信頼が重い。
「無理です!それにマークさんの言う通りギルドメンバーじゃないから参加できません!」
「入ればいい。反対するなら私が抜けて一緒にギルドを作れば良い。それで二人で戦おう」
良い案だと白雪さんは自慢げだ。
無茶苦茶だ。
「おいおいおい!白雪!待ってくれ、いや待ってください!白雪に抜けられると困る!」
「ギルマスいっぱい無茶言った。ユキ困らせた。まだ困らすならやめる」
僕が何をしたと言うのか。
彼女の気持ちは嬉しいけれど、胃がキリキリと痛む。彼女は僕の胃に親でも殺された恨みでもあるのか。
「わかった!なんとか説得する!だから待ってくれ」
でも翻弄されるマークさんの姿は少し面白い。白雪さんと二人のギルドも楽しいかもしれない。
僕が笑うと白雪さんは花が咲いたように笑った。
「良かった。頑張ったのに辛そうだった。えらいえらい」
「ありがとうございます」
彼女は不器用だけど優しい。優しさが身に染みた。辛いことばかりだったけど誰かを助けられて良かった。
僕はずっと俯いていた。顔を上げて情けない顔を見られたくなかった。彼女はずっと僕の頭を撫でていた。
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