一話『階級と等級』
窓から入ってくる朝の光が眩しい。
清々しい気分で目覚めた。
「なつかしい夢だったな、ついに今日だもんな」
あの後、僕は彼らのギルド【快晴】が出資する孤児院に送られた。
ダンジョンの影響で孤児は増えている。けれど、貧しい孤児院は少なくなっている。探索者が支援してくれる孤児院が多いからだ。殺伐とした世界で暮らすからか、それとも救えなかった罪滅ぼしか分からないが彼らは僕たちを救ってくれる。探索者の支援がなくとも少しでも優れた人員が必要で国が対応をしてくれることも多い。それはこの国に孤児院育ちのS級探索者がいることも理由の一つだろう。
探索者は階級と等級によって分けられる。
S級探索者というのは階級がS級ということだ。階級はA級からG級まであり、例外として一番上にS級が置かれる。階級は魔力吸収率によって決定される。S級探索者の有名な話に魔道具の話がある。魔法石からも魔力を吸収するせいで力の制御ができるまで魔道具が使えなかったそうだ。
また等級というのは現在での魔力の強さだ。階級は1等級から10等級まである。つまり階級が成長率や回復率、潜在能力を表し、等級が現時点での強さを表す。また各階級間には3倍等級の差があると言われている。つまりS級10等級はA級8等級やB級2等級と同じ強さだと言われている。一般にはA級10等級、B級8等級、C級2等級がプロと名乗れる実力らしい。それまではアマチュアとして扱われる。なお、D級以下は特別な事例を除いて探索者に登録できない。
これはダンジョンの魔力が有限だからだ。無能に渡す資源はないそうだ。
僕は魔法石から魔力を吸収できないからS級ではない。だから期待と不安が半々だ。
「ユキ、おはよう」
部屋で支度を整えていると僕を呼ぶ声がする。扉を開けて顔をひょこっと覗かせてこちらを見ている少女がいた。
幼馴染のアリアだ。金髪碧眼で男女問わず目を引く見た目をしている。彼女は登録前から既に強さの片鱗を見せているのでA級かB級だと言われている。
「おはようアリア、でもここは男子スペースだ。共有スペースで待ってて」
「はーい。また来るねー」
彼女はそう言って部屋を去っていく。何度言っても毎日来るのだ。
僕たち孤児院の中から同世代の4人で探索者登録に行く。僕とアリアの他にはつんと突き立った赤髪、大きな体で、更には槍の扱いが上手いガレアとそんなガレアにいつもついていく赤みがかった黄色髪で白い肌が特徴のマーガレットが登録に行く。アリアとガレアは期待の星で僕とマーガレットは慣れたら良いなと応援されている程度だ。
「おいノロマ、いい気になるなよ。今日でアリアは俺様のものになるんだ」
「アリアはアリアだよ。誰のものでもない」
「余裕かよ。うぜえ」
ガレアはアリアが好きだ。アリアは皆に優しいから何でもできるガレアにはあまり話しかけず、ガレアやアリアからしたらノロマな僕を気にかけてくれる。それがガレアは気に食わないようだ。
「あー!ガレア!こんなところにいた!もう早くいくよ!」
「おい、待てマーガレット!俺はまだこのノロマに話があるんだ!って力つよっ!」
抵抗の余地なく笑顔のマーガレットにガレアは連れていかれた。普段は平凡なのだが、ガレアが関わるとマーガレットは途端に強くなるなぁ。
それから孤児院皆での朝食をすました僕らは子供たちや院長さんに見送られて探索者ギルドへ向かった。
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