十七話『優雅な監獄生活~Sideマッドサイエンティスト~』
「ふはははははは」
「うるせえぞ!!」
「あ、すみません」
私は天才だ。
そしてマッッッッドサイエンッティストだ。
いわゆる時代の寵児という奴だ。
いやはや、世界は私という存在をもっと祝福するべきだと思う。
「何故私は投獄されているのか」
A.違法建築です。
「何故監獄暮らしの方が規則正しい暮らしなのか」
A.マッドサイエンティストなんて自称するやつが規則正しい暮らしをしてるわけがない。
「何故監獄ではサプリではなく自然食なんて豪華なものが提供されるのか。私なんて一日一サプリだったぞ」
A.最低限の保証です。貴方の暮らしは最低限以下です。
「何故だ」
A.知らん
……
私は監獄で九時間睡眠、六時間労働、一時間の清掃、合計三時間の食事、残りは自由だ。
そして監獄では三食が宇宙光を作って生成された自然食が出てきて、寝床は新品が与えられる。
なんと素晴らしい暮らしなのだろう。けれど退屈だ。
情報デバイスは没収されてしまった。体に埋め込んだデバイスは存在するがそれはダンジョンの種を監視するためのものだ。娯楽を楽しむには心許ない。
在来生物に寄生したダンジョンの種は宿主の意識を奪うことができなかったようで、あれから目新しいことは起きていない。
だから、【変容】の知らせを受け取ったときは心が躍った。
「きたきたきたきた」
「うるせえぞ!」
「黙ってろよ三下が!我が子のはばたくときだ!祝福せずして何がマッドサイエンティストか!」
私は体内のデバイスから直接網膜に焼き付く映像に魅せられていた。
C級ダンジョンの一般兵級の魔物を素体とした我がダンジョンがA級ダンジョンの将軍級の魔物を倒した。
「ふはは、圧倒的じゃないか!」
私の資材を全て投資した甲斐があったというものだ。
このままさまざまな魔物をくらって成長し続けてほしいものだ。
「***番、これ以上騒ぐようなら反省室行きだ」
「…すみません」
私は静かになった。反省室は嫌だ。通信が完全に遮断されている上に身動きが取れない暗室だから精神が狂う。
私は小さな声で圧倒的じゃないかと呟いて、ダンジョンの種の動向に注目した。
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