十五話『怪物と人の違い~Sideタタン~』
この男はなんだ。
これは彼のギフトなのか。
こんなものがギフトなのか。
それとも、彼は人の皮をかぶった怪物なのか。
俺はドラゴンを倒して人の姿に戻った彼がこちらに寄ってきたときにビクつき、後ずさった。
彼は立ち止まって困惑した顔をしている。
気まずいが彼から目を離すことが怖くてできない。
彼の手で僕たちはくびり殺されるのではないか、そう思うと僕は彼から目が離せない。
「タタン、彼は恩人だぞ。そんな目を向けるな」
オスカーさんが怒ってくる。
分からない。僕にはオスカーさんが彼をかばう意味が分からない。
「でも!彼がこちらを襲わない保証はあるんですか」
「タタン!いい加減にしろ!そんなに死にたいなら僕が殺してやろうか!」
「待ってください!」
オスカーさんの本気の殺意だ。
初めて向けられた上位探索者の殺意に身震いする。
「待ってください。僕は大丈夫です。僕は怪物だから良いんです」
「ほら、彼が今認めました。彼は怪っ!!」
僕が言い切る前に僕はミラにぶん殴られてふっとんだ。
背中を落下速度を【遅延】で遅らせて地面に立った。
痛みを遅らせているが痛いものはそれでも痛い。骨折れたんじゃないかこれ。
「タタン。見た目だけで怪物と決めつけるなんてあんたは最低よ。」
「ミラ、それなら君は魔物一体一体に貴方は怪物ですか?私を攻撃しませんか?って聞いてから殺すのか?」
「今そんな話してないじゃない」
「そんな話なんだよ!見た目で脅威を測って俺たち探索者は魔物を殺すんだ。魔物が話をするのを待ったりなんてしない」
「タタンくん、それは間違いよ。魔物にはドッペルゲンガーみたいに人のふりをする魔物もいるわ。それに人の中にも魔物より凶悪なクズも存在する。彼らと戦いになることもあるわ。怪物と人の違いは心よ。彼は人よ」
「…そうですね。ははっ、俺が間違ってたってことなんですね。分かりました」
シンとして誰も喋らない。
ヘレンさんがそういうならそうなのだろう。
この場では俺が悪かったのだろう。
「僕は一人で帰ります」
「そんな必要はない」
彼がそう言った。
オスカーさんは否定するけれど、一人で帰ってくれたらいいのに。
そんな思いが通じたのか彼はオスカーさんの提案を否定した。
「それなら私が一緒に帰る。それで良い?」
突然、我がギルドの誇りであるS級探索者の白雪さんが現れていた。
だけど彼女は何を言っているんだ。
あの怪物と二人で一緒に帰る?
「へ?なんで白雪さんがここに?」
「気になったから遊びに来た」
「そんな理由で…。というか来てたなら助けてくださいよ」
「…今来たところ」
「ここで待ち合わせのセリフ!?それにそれは待ってた側のセリフですよ」
「来ちゃった、てへ」
「てへって言われても誤魔化されませんよ!」
棒読みでふざけているが上機嫌だと分かる。
白雪さんがこんなに楽しそうなの初めて見た。
なんで怪物相手にそんな顔をするんだ。
そして、オスカーさんも納得したのか白雪さんと彼は二人でどこかへ行ってしまった。
何故オスカーさんは止めないんだ。
俺は彼が見えなくなるまで彼の背中を睨みつけていた。
お読みいただきありがとうございます。
どなたか分かりませんが、誤字指摘ありがとうございます。誤字を訂正しました。