十四話『ダンジョンの力』
短めです
自身の炎で燃えた体はたちまちに修復した。唸り声を上げ、この傷を負う原因になった相手を探すが、もうそこには彼はいない。
「ここだよ」
男の声が聞こえたと感覚だけを頼りに自慢の爪を突き刺したが、万力のような力で爪を掴まれ、そしてドラゴンは爪を基点に投げ飛ばされた。
初めて背中を打ち付けたドラゴンはその痛みに、肺から漏れる息に困惑した。
追撃をしかけようとしてくる気配にたまらず空へと逃げた。
この私が逃げたのか。
この男はなんだ。
ドラゴンは改めて少年を見た。
ユキという少年に宿ったダンジョンの種は奇才の創り出した機動要塞型ダンジョンである。
そのリソースのほとんどを他己分析と自己反映に費やしている。このダンジョンの特性を一言でいうなら【変容】だ。
オオトカゲを分析し、その力を階級外のダンジョンリソースをフル動員して変容した姿が今の姿だ。
たかがC級ダンジョンのモブ魔物を原料としていても弱いはずがない。
オオトカゲの種族の自然界の頂点をドラゴンとするなら、さしずめ彼の姿は宇宙の頂点とでも言えよう。
それをドラゴンも感じ取った。けれど頂点に君臨するプライドが二度の後退を許さない。
逃走ではなく闘争を選んだ。
羽をはばたかせ、己の出せる全速力でもってこの敵を倒さんとした。
「えっと、こんな感じかな」
彼は手を数度開閉して何かを確かめるとこちらに手をかざした。
彼の手のひらに光が収束していく。
ブレスだとドラゴンは気付いたが全力の加速でもう止まれない。
ならば奴のブレスごと奴を殺すまでと更に加速した。
「名前どうしよ、いいや。ドラゴンビーム!」
彼から光の奔流が放たれた。それはドラゴンにぶつかりドラゴンを呑み込み、ドラゴンと共に消えた。
後にはドラゴンの魔法石と牙、爪だけが残った。
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この後、別視点を少ししますが一区切りです。
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