#2-OPが挟まるならきっとここ
びっくりするほど非現実。
こんにちは。始まる新生活へ人並みに胸を躍らせ校門を潜れば、異世界にお出迎えされてしまった登校初日の俺です。
校舎へ一歩踏み入れた所で棒立ちになっていればいくら新入生といえども悪目立ちしていたようで、先程から微妙に視線が刺さります。
これはいけません。取り敢えず適当に一礼して怪しくないアピールをしたら、その場から素知らぬふりして動きましょう。
当然右も左も分からないので、ここは聞き耳と目星の出番です。
結果、探り当てた新入生仲間と思わしき人達の後ろをそれとなくついて行く事で、教室棟への到達をクリア。続いて自分のクラスと座席をどうにかこうにか割り出せば、少しの間も無く教師の雑な挨拶が始まり、そして。
ーーそして一年以上の月日が流れた。
今は秋。夏休み明けの二学年後期である。
なんとも無難な日々だった。
ノソノソと身支度を整え、時間ギリギリに教室へ駆け込み、眠気を堪えながら授業を受ける。そんな毎日。
学費を稼ぐ必要がありはしたけれど、それは何も異世界だからという訳ではない。当初通うはずだった日本の高校であれど、バイトをしながら生活する未来はどこかにあったと言えるだろう。
気付けば学年は上がり、加えて半年も時間が過ぎていた。
今更何が起こる筈もない。今日もまた、休み明けの勉学の怠さをクラスメイトと共有するような、何ら特徴のない生活を送るのだろう。
そう、思っていた。
「初めまして、セリア・リジアです」
鈴よりも軽やかで可愛らしい音に、桜を思わす淡い髪。窓から吹く単なる風でさえ味方につけ、ふわり、その存在を引き立たせる。
瞬間、全てを理解した。
転生トラックがなかった理由。今日までが平凡に過ぎ去って行った、その理由を。
「今日からよろしくお願いします」
俺の異世界トリップライフは、これからだーー。